東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、セシウム(Cs)で汚染された汚染土壌が大量に発生した。保管場所の確保の難しさから、その減容化が求められている。そこで、本研究では、「農林系・廃棄物系バイオマス」を添加して水熱分解処理を行うことで有用な「有機酸」を得て、亜臨界状態の水および得られた有機酸により汚染土壌からCsを分離する手法を開発することを目的とした。本研究では水熱分解条件とCs分離率の関係を調べることで高Cs分離性を示す水熱分解条件を実験的に検討した。研究期間全体を通して、蒸留水のみを用いた水熱分解処理と比べて、バイオマスを添加した条件下において土壌中の構成成分の粘土鉱物に対して水熱分解処理を施した場合に高いCs分離性が得られることが確認された。また、農林系・廃棄物系バイオマスから生成される有機酸を同定し、Cs分離に有効な有機酸が比較的に多価のカルボン酸であることや生成された有機酸による土壌中の粘土鉱物の溶解が主なCs分離メカニズムとなることが示唆された。さらに、超音波流速分布計測法により装置内の水の流れに同伴される土壌の流動状態を調べ、Cs分離に有効な装置内攪拌翼の攪拌速度を明らかにした。最後に、得られた知見に基づいて、実規模のプロセスを概念設計し、規模・減容効果について実用性の観点から本技術を評価することができた。今後、実用化のための処理の連続化研究や土壌以外の汚染物への本技術の適用対象の拡大など、より一層の研究開発が望まれる。
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