研究課題/領域番号 |
15K20991
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田原 麻梨江 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60721884)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 圧力センサ / 柔らかいセンサ / フレキシブル / 音 / 周波数特性 / 分布型 |
研究実績の概要 |
現在、医療や介護用ロボットの需要が高まっている中で、人が触れても違和感のない触覚センサで、どれくらいの力がどこに加わっているのかを測定できる分布型センサが望まれている。本研究ではゴム管内を伝搬する音の周波数特性を利用することによって、柔らかく、かつ加重位置の分布を測定できる触覚センサを開発することを目的としている。 1年目はセンサを2次元化するためシリコンゴムに音の導波路を製作する手法を考案した。5 cm角の渦巻き型、および平行並列型の2次元センサを製作した。実証実験として、イヤホンからスイープ音を送信し、マイクロホンで受信した信号の周波数解析を行い、位置応答を得た。その結果、2次元で圧力を検出可能であることを明らかにした。 本年度は、ロボット用の触覚センサへ応用するため、計測時間の短縮法について検討した。従来は周波数特性を精密に測定するための装置を用いていたため、測定に数分を要した。しかし、ロボット用の触覚センサへ応用するにはできるだけ即時に検出する必要がある。本年度は発信機からスイープ信号を出力し、オシロスコープで周波数特性を取得し、PC内で周波数特性の解析および位置応答を算出する方法について検討した。その結果、数分程度の測定時間を要していたところ、数秒程度で計測できるようになった。また、信号処理方法については、周波数特性分析器内で行われているものと同様の信号処理を適用することで、測定時間と信号の正確さを両立する方法について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロボット用の触覚センサへ応用する場合、できるだけ瞬時に圧力を検出する必要がある。昨年度の課題の一つとして、測定時間が1分くらいかかるという問題点があった。その原因として、音の周波数特性を測定する装置に、周波数特性分析器という高精度な周波数特性を測定する装置を用いていたためである。本装置は、イヤホンやマイクロホンの周波数特性を積分演算等を施して精密に測定するための装置であり、計測用に特化したものではない。 そこで、今年度は発信機からスイープ信号を出力し、オシロスコープで周波数特性を取得し、PC内で解析する方法について検討した。その結果、数分程度の測定時間を要していたところ、数秒程度で計測できるようになった。また、信号処理方法については、周波数特性分析器内で行われているものと同様の信号処理を適用することで、測定時間と信号の正確さを両立する方法について検討した。得られた周波数特性の全範囲内全ての周波数に対してフーリエ変換をする代わりに1波長単位でフーリエ変換した。その結果、1波長単位でフーリエ変換を施した方が、S/N比が良くなることがわかった。 本年度は、計測時間の短縮ができた。しかし、イヤホンとマイクロホンの周波数のトレンドが影響し、音源付近に不干帯が生じることがわかった。来年度は、所望の測定感度を得るための信号処理方法について検討予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ゴム管内を伝搬する音の周波数特性からゴムに加わった圧力を検出するセンサについて、不感帯があることがわかった。これは、音源に利用するイヤホンと音を検出するためのマイクロホンの周波数特性のトレンドに起因するものである。理想的にはイヤホンとマイクロホンは周波数に対してフラットな特性を有する必要がある。しかし、一般的な音響機器は1 kHz付近に音響エネルギーが集中する。 一般的な音響機器を用いても感度よく測定するための信号処理方法について検討する。具体的にはトレンドが重畳している測定信号から線形近似を抽出し、元の信号から抽出した近似曲線を差し引くことで、トレンドが含まれない信号を取得予定である。また、オーバーラップ法を適用したフーリエ変換の方法による感度向上を検討する。 また、信号処理を改善したシステムにおいて所望の精度で計測できる限界距離(減衰特性)を調べる。場合によっては、音源を複数セット用意して、センサの全領域で計測できる方法について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用するゴムセンサ材料費として使用額に余りが生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
同様にゴムセンサ用のゴム材料を購入予定である。
|