研究課題/領域番号 |
15K20994
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松浦 大輔 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教 (40618740)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気テザー / 非接触マニピュレーション / 精密マニピュレーション / 精密画像計測 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,以下に注力して研究を行った. 1.磁気テザーの発生磁力の理論解析モデルの構築:磁極に取り付けたコイルへの印加電流が生成する磁場は,磁極先端を介して作業領域に放出され,プローブである微小磁性粒子の磁化は複数の磁極が生成した磁場の重ね合わせで求められる.コイル印加電流と磁性粒子に生じる磁力との関係を解析的に求めるための理論モデルとして,これまでに申請者らのグループが提案している集中磁荷モデルを,作業領域の中心から遠い領域まで精度良く近似するために改善を試みた.具体的には,様々な磁極配置状況やコイル印加電流の組合せについて,FEM解析結果と集中磁荷モデルの解析結果とを比較し,1本の磁極に対して印加電流-発生磁場の支配係数が異なる複数の集中磁荷を割り当てることで磁場生成の非線形性を高い精度で近似可能とする改良されたモデルの構築を試みるなどである. 2.磁化のヒステリシスのモデル化と,それを低減する制御入力の決定:磁気テザーの解析モデルにヒステリシスの項を設け,その影響を低減可能とする手法に関して,既存の磁場解析・ヒステリシス解析手法を調査し,本問題への適用可能性について検討した.所望の作用力を実現可能とするコイル電流の組合せが無数に存在する冗長駆動系である事に着目し,それら無数の解の中からヒステリシスを最小化可能であるものを選択する制御戦略を組み込むことを試みた.また,磁気テザー本体と試料駆動ステージ機構および画像計測系の改善に関しては,コイルの巻き数や線径を変えて発生磁力が強く制御性も良くなるコイルの設計について検討した.この結果から,改良型のプロトタイプの設計・試作を試みる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,申請時に掲げた研究計画に概ね沿ったスケジュール・内容により進められたため,上記の進捗状況であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,引き続き磁気テザーの理論解析モデルの改善を行うのと同時に,実験的な発生磁力のキャリブレーション方法や強い発生力の達成に取り組む予定である. 1.磁気テザーの発生磁力の測定手法の開発:昨年度に構築・試作した解析モデルと磁気テザーシステムにより作用力を発生させた際,目的の力の大きさと方向に対して出力がどれだけ近い値になっているかを計測する.既知の粘度を持つ媒質中で作用力を生じさせ,その際の磁性粒子の速度の測定結果を用いて計算する方法や,より精度の高い他の方法,PDMSゲルで作成した多数のピラー状構造物の先端に磁性粒子を接着した力計測用プローブを用いる方法などの実施も試みる. 2. 磁気テザーの理論解析モデルの実験的キャリブレーション:磁気テザーの作用力を良好な精度で推定するためには,解析モデルの改良と共に実験的なキャリブレーションも行う必要がある.上記の発生力の測定結果を用いたオフラインでのモデルの改良と平行して,オンラインで制御入力の補正を行う手法の構築も試みる.例えば,コイルへの印加電流と磁極の磁化との間には大きなヒステリシスがあるため,駆動用のコイルとは別に磁極の磁化を検出するためのコイルを取り付けるなどの装置の改造を行い,その測定結果を順解析モデルへ代入して得られた残留磁化による磁力を補償する制御入力の項を新たに加える等の方法が考えられる.以上のようなオンライン・オフラインのモデル改良手段を用いて,作用力の推定精度を向上させた上で,最終的な変位と作用力の制御精度を検証する.
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