研究課題/領域番号 |
15K20998
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
横山 泉 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 講師 (30712236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 配偶者控除 / 女性の年収分布 / 女性の働き方改革 / 労働供給決定 |
研究実績の概要 |
慶應義塾家計パネル調査と、賃金構造基本統計調査、リクルートとの共同プロジェクトで得た企業データから、配偶者控除の実態を明らかにする複数の研究を行った。慶應義塾家計パネル調査を用いた分析では、理論モデルを支持する次のような結果が得られた。2004年の配偶者控除の一部廃止は、低所得既婚女性の労働時間と所得を増加させた。一方、税制改正に直接的な影響を受けていない年収103万円以上の既婚女性に関しては、同時期に起こった夫の所得増加傾向を受け、税制改正により新たに生み出された予算制約線上の屈曲点へと、所得を低下させるというケースが見受けられた。低所得層における所得増加と、中高所得者層におけるこの“所得ジャンプ”の両方を受け、結果として、歴史的に存在する、既婚女性の収入分布の103万円における“ゆがみ”はより顕著となった。このことは配偶者控除の一部廃止は必ず収入分布にゆがみをもたらすことを意味している。また、政府データを利用し、女性の年収分布の変化に関する研究も行った。この分析の一部は一橋大学のディスカッションペーパーとして刊行された後、投稿していた海外の査読付き学術雑誌からはRevise & Resubmitに招かれ、現在出版に向けて改訂中である。さらに、厚生労働省の賃金構造基本統計調査を用いた研究では、女性の年収分布の変化に関する分析に昨今の配偶者控除の議論を加えた分析は、『女性の労働と税―データを用いた現状分析―』「フィナンシャル・レビュー:<特集>税制改革‐エビデンスに基づいた政策提言」平成28年(2016年)第2号(通巻第127号)として出版された。それに加え、その英語の翻訳である財務総合政策研究所学術論文集 『 Public Policy Review 』も平成29年度中に出版される。リクルートとの共同プロジェクトでは女性の雇い入れから継続雇用の現状を分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
この科研費のプロジェクトから現在4つの論文が完成し、そのうち2つがすでに出版され、残りの一つは海外の海外の査読付き学術雑誌からはRevise & Resubmitに招かれ、最後の1つは平成29年度中に出版予定である。また、研究を進めるごとに、今後の研究につながる問題点が発見され、引き続き出版物が増える見込みであるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後配偶者控除に関しては新たな局面を迎える可能性が高いが、経済学の理論に基づいた政策提案をし、現在の各案に対してSimulationを行い、予測される結果をより精緻に議論する。その結果を国内外に発表し、現在国内で急務な課題に対してだけでなく、普遍的な インプリケーションを導くことを目標とする。また、インターネットやリクルートとのプロジェクトで入手可能となった企業データを使い、これまでとは異なる視点から今後の女性の働き方に関して、より新規性の高い研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
293円と非常に微小な額のため、全て予定通り使用したと言っても過言はない。
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次年度使用額の使用計画 |
文具などの購入に充てる。
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