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2016 年度 実施状況報告書

明治期の詠史詩集の研究――大沼枕山『歴代詠史百律』『日本詠史百律』を中心として

研究課題

研究課題/領域番号 15K21000
研究機関横浜国立大学

研究代表者

高芝 麻子  横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (80712744)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード大沼枕山 / 詠史 / 漢詩 / 大沼厚
研究実績の概要

論文「「滅却心頭火自涼」の意味するもの」(『中唐文学会報』23号、2016年10月)において、日本語の語彙や表現の中に歴史的事実がどのように反映され、どのように意識が変化していくのかについて、明らかにした。故事成語「滅却心頭火自涼」は戦国時代には元来の唐詩の文脈を離れて広く用いられる表現となり、さらに明治期には政治的な意味が加わり、戦後にはその政治性が失われて現在の意味を持つようになったということを整理し、明治期の歴史観、国家観が日常に用いる語の意味に大きく作用していることを確認した。
論文「江戸期の初学者向け作詩教本に見える分類方法について」(『新しい漢字漢文教育』63号、2016年11月)において、漢詩実作のための教本の分類が次第に日本的な価値観を導入していったことを明らかにし、作詩人口の拡大を受けて、作詩時の発想そのものから中国古典の枠組が薄れていることを指摘した。
論文「明治期の大沼枕山と詠史詩」(未公刊)において、詠史詩を百首集める詩集の刊行が幕末から明治期にかけての流行していたことを明らかにした。またその流行に対して大沼枕山が否定的な見方を示しつつ、自身も『日本詠史百律』『歴代詠史百律』という百首組の詠史詩集を刊行している意味、そこに込められた自負について検討し、明治期の枕山詩業の一端を分析した。
また大沼枕山の遺族に聞き取り調査を行い、枕山が詩作の際に用いた工具書について、蔵書についてなど様々な知見を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)幕末から明治期の詠史詩集の刊行状況、および作詩教本の状況について、広範囲に調査を行い、資料を集めることができ、論文「江戸期の初学者向け作詩教本に見える分類方法について」「明治期の大沼枕山と詠史詩」としてまとめられたため。
(2)『歴代詠史百律』訳注作業は八十五首(百首中)まで完了、『日本詠史百律』の訳注については「菅公」「紫式部」など一部作品への訳注を開始しているため。
(3)明治期の国家観、歴史観が故事成語の意味に変遷をもたらしたことを、論文「「滅却心頭火自涼」の意味するもの」によって明らかにし得たため。

今後の研究の推進方策

(1)大沼枕山『歴代詠史百律』訳注作業を年度内に完成し、訳注書の刊行を目指す。
(2)大沼枕山『日本詠史百律』『歴代詠史百律』の内容を分析し、同時代やそれ以前の詠史詩との比較を踏まえ、枕山の詩業と明治期の詠史詩の持つ国家観、歴史観の関わりを明らかにする。
(3)散逸した枕山の詩の収集を可能な範囲で進め、不明な点の多い明治期の枕山の詩業の全体像を見通す手がかりとする。

次年度使用額が生じた理由

訳注協力者への旅費の支払いが発生しなかったため。
資料整理のための人件費・謝金を計上していたが、まだ資料整理を依頼できる段階ではなかったため。

次年度使用額の使用計画

今年度も引き続き、資料複製、およびに資料購入(書籍・データベースなど)を計画している。また資料調査・学会出席のための旅費、およびに訳注協力者との会合のための旅費、資料整理(関連文献のPDF化、古籍の写真データ化、および大沼枕山旧蔵書)のための人件費・謝金などの支払いの予定がある。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] 明治期の大沼枕山と詠史詩2017

    • 著者名/発表者名
      高芝麻子
    • 雑誌名

      和漢比較文学

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「滅却心頭火自涼」の意味するもの2016

    • 著者名/発表者名
      高芝麻子
    • 雑誌名

      中唐文学会報

      巻: 23 ページ: 19-35

  • [雑誌論文] 江戸期の初学者向け作詩教本に見える分類方法について2016

    • 著者名/発表者名
      高芝麻子
    • 雑誌名

      新しい漢字漢文教育

      巻: 63 ページ: 20-30

    • 査読あり

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公開日: 2018-01-16  

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