研究課題/領域番号 |
15K21001
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 遼 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (40748349)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 森林コーヒー / 環境保全 / Eye Tracker / 社会実験 / 購買行動 / 認証制度 |
研究実績の概要 |
近年、世界的な環境問題に対して、環境配慮型農産物認証制度への注目が高まっている。認証製品への需要は、主に欧米諸国で高まっている一方、日本における市場シェアは極めて限定的である。しかし、日本において普及の阻害要因を厳密に検証した実証研究がないため、その要因は明確ではない。 そこで、本研究の目的は、日本において環境配慮型認証製品を購入する際に生じる障害を社会実験を通して特定することにある。2015年11月に、早稲田大学内で約250名を対象にしたコーヒーの試飲実験を行った。 実験では、3種類のコーヒー製品(内、1種類が認証製品)のラベルをパソコン上に提示し、被験者には購入希望のコーヒー製品を選択してもらう。その際、購入を希望した被験者に対して、実際にコーヒーの提供を行い、コーヒーを購入してもらった。これにより、実験室内での環境ではあるが、Willingness to Pay (WTP)を用いた測定と比べて、より現実的な購入の意思決定を測定することが可能となる。 被験者がこのような意思決定を行う際、視線測定装置(Eye Tracker)を用いて被験者の視線の動きや視線滞留時間の記録を行った。このような視線データを用いて、製品ラベルのどの要素が購入の意思決定に影響をおよぼすのかの検証を行う。 視線データと被験者の属性データを結合させ、操作変数法を用いて分析を行った。その結果、ラベル全体への視線滞留時間が認証製品の購入行動に正に有意の影響をおよぼしていたことが明らかとなった。一方、認証製品のロゴマークや認証制度に関する説明文などは購入行動に統計的に有意な影響はなかった。また、過去の購入経験なども実際の購入行動には結びついていないことが、本実験から明らかとなった。 現在、分析を終え、結果を英文論文としてまとめる作業を行っており、来年度には国際的学術誌への論文の提出を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、助成期間1年目において、早稲田大学内でコーヒー選好に関する実験室内における実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
実験の結果を踏まえ、助成期間の最終年度にあたり本年度では、計画書でも述べた通り、実社会における社会実験を行う。提出した研究計画書では、コーヒー店舗を想定にしていたが、本研究では、企業と協力し、自動販売機を用いた社会実験を行う。なお、(株)アペックス社に産学連携の研究への協力承諾を頂いた。同社は、紙コップの自動販売機を扱う企業であり、製品の一つに認証コーヒーを扱っている。本実験では7つの地域を選択し(品川区、府中市、厚木市、甲府市、郡山市、大阪市、広島市)、約1,500台の自動販売機を対象に実験を行う(期間は2016年6月から3ヵ月間)。実験後は、実験結果を精査に検証し、普及に向けた政策提言を行い、世界的な森林減少の問題に対して貢献したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に実験を実施した際、調査用タブレットを購入し、タブレットを用いてアンケート調査を行う予定であったが、時間的制約のため紙媒体によるアンケートを実施した。そのため、タブレットを購入する金額分の予算を来年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、自動販売機を用いた実験を実施する予定である。その際、自動販売機が設置されている企業において、アンケート調査を行う計画である。 2015年度に繰り越した予算を用いて、タブレットを購入し、タブレットを用いて調査を実施する。
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