研究課題
過去の他グループによる研究において、グレリンの黄色ブドウ球菌や緑膿菌に対する増殖抑制効果を示唆することが報告されたため、今回、非結核性抗酸菌に対するグレリンの抗菌効果を検討した。2種類の菌株(Mycobacterium avium 104(標準株)とM. intracellulare(高病原性臨床株) M.i.198において、0-400 μg/mlのグレリン存在下での5日間培養後の菌数を検討したところ、他グループの報告とは異なり、菌数がグレリン濃度依存的に増加することが判明した。また、100 nM PMAで分化させたTHP-1マクロファージ細胞に感染させたM.i.198の菌数変化を検討したところ、グレリン存在下(100 nMから1 μM)で、1週後の細胞内での菌数が増加した。今回の結果は、非結核性抗酸菌に対して、抗菌作用を有さないことを示しており、他の視床下部ペプチドにおける既報の抗菌作用についても再検討の必要性を示唆する。また、グレリンが敗血症性ショックや慢性炎症性疾患における炎症性サイトカイン産生を抑制するという知見から考察すると、今回の結果は、グレリンがマクロファージの炎症性サイトカイン(TNF-α等)産生抑制を介して菌増殖を促進することを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、当初の予定通り、グレリンの直接的抗菌作用および細胞内感染菌に対する作用を検討した。既報の結果とは異なり、グレリンが非結核性抗酸菌の増殖を促進することが判明したが、その機序を検討することは、グレリンの抗炎症作用機序の解明、ならびにグレリンの臨床応用における着眼点や注意点の解明につながる。したがって、進捗状況としては、おおむね順調に進展、と判断した。
過去の報告では、グレリンの直接的抗菌作用が示唆されていたが、今回、非結核性抗酸菌に対して、グレリンが菌の増殖を促進するという全く反対のデータを得た。この作用は、マクロファージ内での感染菌においても確かめられたことから、生体においては、グレリンのマクロファージに対する炎症性サイトカイン産生抑制作用を介した、菌の増殖促進作用が推測された。現在、これを確かめるために、サイトカイン産生抑制作用を確認する実験を行っている。今後の計画として、細胞実験による炎症性サイトカイン発現パターン、およびマウス等生体内での非結核性抗酸菌症における菌数-炎症反応の関係を検討することにより、非結核性抗酸菌感染症における菌増殖-抗炎症-病態形成の関係を検討する。
当初より2年間の研究計画であり、かつ、今年度も実験を行う必要が生じたため、前年度使用額からの残高を、今年度分の使用額とする。
おもに、real time PCR試薬、培地、シャーレ等の実験消耗品に使用する。その他、学会発表、論文発行等に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
呼吸器内科
巻: 29 ページ: 65-70
PLoS One
巻: 10 ページ: e0141658
10.1371/journal.pone.0141658. eCollection 2015