研究課題/領域番号 |
15K21008
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
西川 雅美 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20622393)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光電極 / 光触媒 / エキシマレーザー / 反応安定性 |
研究実績の概要 |
光電極の実用化において、長期使用による水分解活性の劣化を生じさせない反応安定性は、極めて重要でクリアすべき課題である。これまでに、モデル材料としてCu2O光電極上に、エキシマレーザー照射法を用いて結晶性TiO2層を複合させると、Cu2O光電極の反応安定性が極めて向上することがわかった。しかし、TiO2の複合化により、Cu2Oが本来有する水分解活性が減少することが課題として残された。この原因は、TiO2に残存する酸素欠損であると考え、本研究では、エキシマレーザー照射法に酸素プラズマを融合させることで、TiO2の酸素量を制御し、Cu2Oの水分解活性を劣化させずに反応安定性のみを向上させることを第一の目的とした、 まず酸素ラジカルを発生させるプラズマ装置とエキシマレーザー照射装置を連結し、酸素ラジカル雰囲気中で光電極にレーザーを照射可能な実験系を構築した。その後、酸素ラジカル雰囲気中でCu2O上にTiO2前駆体膜を塗布した光電極にエキシマレーザーを照射し、TiO2を結晶化させた。その結果、酸素ラジカル雰囲気はTiO2の結晶化過程に大きく影響することが明らかになり、最も影響を与えた特性は、TiO2の酸素量であった。単に空気中でのエキシマレーザー照射では、水分解活性劣化の原因である酸素欠損を解消することが困難であったが、酸素プラズマと融合させることで、TiO2の酸素量が制御できることが示された。 今後は、酸素ラジカル雰囲気中でレーザー照射した場合におけるレーザーフルエンス、ショット数がTiO2の特性(酸素量、結晶性等)に与える影響を体系的に調べ上げ、Cu2O光電極の反応安定性の革新的向上を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸素ラジカルアシスト光誘起結晶化法の実験系を構築し、エキシマレーザー照射への酸素プラズマの融合効果を検証した。エキシマレーザーと酸素プラズマの融合は、初めての試みであったが、酸素ラジカル雰囲気は、TiO2の結晶化過程に大きく影響することを明らかした。特に、TiO2の酸素量に大きく影響することがわかり、酸素の侵入(もしくは拡散)は、TiO2表面だけでなく、比較的深い内部にも及んでいることがわかった。そのため、本手法(酸素ラジカルアシスト光誘起結晶化法)は、TiO2の酸素量の制御に極めて有効であることを確認した。 一方で、酸素の侵入深度が深いため、下層のCu2OのCuOへの酸化が促進されることが課題となった。生成したCuOは、水分解活性を低下させてしまうため、CuOを生成させずにTiO2の酸素量を制御することを目的として、TiO2の結晶性、酸素量、CuO生成量の観点から、酸素ラジカル雰囲気中でのレーザー照射条件(フルエンス、ショット数等)の最適化を実施した。現在は、これら因子(TiO2の結晶性、酸素量、CuO生成量)と光電極の特性(反応安定性、水分解活性)との関連を体系的に調べている。
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今後の研究の推進方策 |
光電極の水分解活性、反応安定性に影響するパラメーター(TiO2結晶性、酸素量、CuO生成量等)を明らかにしていくと同時に、エキシマレーザーを照射するときの酸素ラジカル雰囲気の効果について、基礎的知見を体系的に構築していく。まず、XPSを用いて酸素侵入(もしくは拡散)深度を評価する。また、微量の酸素欠損量に関しては、ESRを用いて評価する。これら基礎的な知見と、光電極の特性、レーザー照射条件との関連付けを行うことで、酸素ラジカルアシスト光誘起結晶化法の確立とその現象の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
エキシマレーザー照射法への酸素プラズマ効果を検討するにあたり、TiO2の酸素量を評価することが難しく、XPS、ESR等を使用して、酸素量を定量的に評価する必要が生じた。そのための必要経費分を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
TiO2の酸素量を定量的評価するため、XPS、ESRに関連する器具の購入に充てる。
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