光電極の実用化に向け、長期使用により水分解活性を劣化させない高い反応安定性を光電極に付与するプロセスを構築すべく、熱耐性の弱い光電極に、その特性を変化させずに、化学安定性の高い金属酸化物を複合可能なエキシマレーザー照射法と酸素プラズマ法を融合した酸素ラジカルアシスト光誘起結晶化法を新規に開発した。本研究では、本手法により、モデルとしてCu2O光電極にTiO2を複合化し、Cu2O光電極に反応安定性を付与することを目指した。従来のエキシマレーザー照射法では、室温でTiO2を結晶化できるため、Cu2O光電極の特性を変化させずに、結晶性TiO2を複合することができ(通常の炉による熱処理ではCu2OはCuOに酸化される)、Cu2O光電極の反応安定性を向上することができる。しかし、熱平衡プロセスではないため、酸素欠損が解消されずに残されており、TiO2を複合化することで本来のCu2O光電極の水分解活性が低下する。これは、前駆体膜の有機金属化合物に、大気中でレーザー照射した場合、レーザーにより金属-配位有機物間の結合が切断された際、金属と有機物の酸化反応が効果的に進まず、TiO2膜に酸素が十分に取り込まれないためである。一方、酸素ラジカルアシスト光誘起結晶化法では、レーザー照射下のTiO2の結晶化速度が大幅に向上し、酸素欠損が改善できることを明らかにした。これは、酸素プラズマ内の酸素ラジカル種の高い酸化力によるものであり、レーザーによる金属-配位有機物間の結合切断の際、酸素ラジカル種が効果的に酸化反応に寄与し、酸素が十分に取り込まれた状態でTiO2を形成するためである。以上より、本手法は、活性劣化を招く酸素欠損を解消することに有効であり、Cu2O光電極に、より結晶性の良好なTiO2を複合させることで本来のCu2O光電極の水分解活性を維持した状態で、反応安定性を付与できる可能性を見出した。
|