研究実績の概要 |
平成27年度においては、置換2,2′-ビピリジン配位子および9-BBN骨格を有する種々の4配位カチオン性ホウ素錯体を合成し、その光物性および紫外光に対する固体フォトクロミック挙動を明らかにした。錯体のビピリジン配位子部分の4,4′-位に種々の電子求引性基または電子供与性基を導入、あるいはフルオロ基を4,4′-、5,5′-、および6,6′-位に導入したところ、いずれの錯体においても固体状態でのフォトクロミック挙動は保たれた。また、置換基の種類および置換位置を変えることで光照射後の固体の呈する色を赤、橙、黄色、あるいは紫と広範囲に変化させられることを見出した。4,4′-位に置換基を導入した場合、置換基の電子的性質と吸収極大波長に強い相関があることがわかった。一方で、ホウ素上の置換基と対アニオンを変更した一部の化合物では固体フォトクロミック挙動が観測されなかったことから、4配位カチオン性ホウ素錯体の固体フォトクロミック挙動の発現可否には、ホウ素上の置換基と対アニオンの組み合わせが重要な影響を及ぼすことが示唆された。 平成27年度の検討成果は、4配位カチオン性ホウ素錯体の固体フォトクロミック挙動の発現機構の解明に向けた大きな手がかりを得た点で重要である。また、光反応生成物の色を広範囲に変化させられる手段を見出したことは、本研究で確立を目指す4配位カチオン性ホウ素錯体を基盤とした新規なフォトクロミック基本骨格の構造-物性相関を明らかにするという基礎面における重要性だけでなく、フォトクロミック材料としての応用面での価値をも高めるものである。
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