研究実績の概要 |
本研究では、骨質と骨密度の双方の観点から、放射線照射が脊椎骨に対し骨脆弱性をもたらすメカニズムをラットの椎体骨を用いて力学的変化を検証した。Wister/ST系Ratの雌15週に対し腹腔内注入麻酔した後、小動物放射線照射装置を用いて腰椎に20Gy単回の外照射を行った。照射後0,2,4,6,8週(それぞれN=7)で屠殺し第4,5腰椎を一塊に摘出し、椎体圧縮負荷試験および、マイクロCTを施行して、同週齢の非照射モデルと比較した。 椎体圧縮負荷試験は、第4椎体が破壊される荷重ピーク値(N)計測した。またμCTを用いて第5椎体海綿骨の構造解析と骨密度測定を行った。海綿骨の構造解析では、データをもとに実際に3Dモデルを作成した。統計解析は、Mann Whitney U testを用い、有意水準を5%未満とした。 骨強度は、放射線照射後2,4,6,8週のモデルで同週齢の非照射群に対して低下していた(P<0.05)。照射後の比較では、骨強度は照射後0週(398±41N)と比較し、照射後2週(345±57N)で低下し、照射後4,6,8週(275±50N、262±29N、274±28N)でさらに低下していた(P<0.05)。 骨密度は、放射線照射群で同週齢の非照射群に対して低下を認めなかった。照射後の比較では、骨密度は、照射後0週で964㎎/cm3 、2週群951㎎/cm3、4週群957㎎/cm3に対して、6週群902㎎/cm3、8週群895㎎/cm3と6週以降で低下傾向を認めたが有意差はなかった。 μCTによる海綿骨構造解析では骨梁間隔が照射群94.4±5.3μm、非照射群72.9±3.6μm、骨梁連結性が照射群24.6±3.4(1/cm3)、非照射群35.5±4.7(1/cm3)と、いずれも有意差を認めた。照射群に比べ非照射群では骨梁間隔増大と骨梁連結性低下を認め、立体構造が粗であった。
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