研究実績の概要 |
本研究ではラット脊椎骨を用いて放射線照射による骨脆弱性の経時的変化とその力学的・構造変化を捉えた。Wister/ST系Ratの雌15週に対し腹腔内注入麻酔したのち、小動物放射線照射装置を用いて腰椎に20Gy単回の外照射を行った。全身への影響を最小限とするため照射範囲は鉛板を用いて腰椎のみに限局させた。照射後2、4、6、8、12、24週(n=42)に屠殺し第4,5腰椎を摘出したのち、第4腰椎を用いて椎体圧縮負荷試験を行った。骨が破壊されるまで2mm/minの速度で荷重を負荷し、破壊された荷重を骨強度(N)とした。さらにμCTを用いて第5腰椎の椎体海綿骨の構造解析と骨密度測定を行った。非照射群(n=30)に対しても同様に屠殺しコントロール群とした。 骨強度は照射後群でいずれも非照射群に対し有意に低下していた(P<0.01)。さらに、4週群、6週群、8週群、12週群、24週群の骨強度275±50N、262±29N、274±28N、251±22N、236±30Nは、2週群の骨強度311±57Nに対し有意に低下していた(P<0.05)。μCTによる海綿骨構造解析では、照射群に比べ非照射群では骨梁間隔増大と骨梁連結性低下を認め、照射後の時間経過とともに立体構造が粗になっていった。骨密度(BMD)は、6週以降で低下傾向を認めたが有意差は認めなかった。 海綿骨の微細構造の低下によって骨強度の低下が示されたことから、放射線の脊椎骨に与える影響は海綿骨の立体構造の変化である。骨強度は照射後2週で低下を認め、24週後も改善を認めなかった。 現在、海綿骨の立体構造が変化する原因として微少血管に対する血流障害を考えており血管内皮細胞の免疫染色を施行中である。同時に、骨代謝も解明のための病理組織学的検査も進める予定である。
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