研究課題/領域番号 |
15K21017
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
濱口 隆史 金沢大学, 大学病院, 診療放射線技師 (20749329)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンピュータ断層撮影 / 物質弁別 / Dual-energy / 脂肪肝 / 輸血後鉄過剰症 / 脳梗塞 / 脳出血 |
研究実績の概要 |
Computed tomography (CT) 検査において,被ばく量を増加させず,造影剤も全く使用せずに,新たな定量的画像解析システムを確立するため,以下の通り,ファントム実験を行い,今後の研究進展への成果を見出すことができた. 1)頭部および腹部を模擬した水ファントムを使用し,2つのX線管電圧による合成CT画像において最も画像ノイズの少ない組み合わせが判明した.理論的には,X線実効エネルギーの離れた組み合わせを用いた場合の方が,物質弁別の精度は高いと考えられる.本実験においても,X線エネルギースペクトルの分布を低エネルギー側から高エネルギー側をより分離するためのスズフィルターを付加した組み合わせで有意に画像ノイズが低減した.しかしながら,最も物質弁別能力の高いと予想されたX線管電圧の組み合わせでは,腹部のような大きな対象では,画像ノイズが増加した. 2)本解析には,各臓器から分離する物質(脂肪や血液など)が濃度100%の状態におけるCT値を必要とする.しかし,実際に臓器に沈着している物質を純粋に抽出するのは困難なため,任意の物質を選択可能な市販の電子密度ファントムを用い,純粋な脂肪および水のCT値を,(1)の至適管電圧の組み合わせを含む,全てのX線管電圧にて決定した.純粋な鉄のCT値は装置の測定限界を超えてしまうため,正常な肝臓に取り込まれるMRI用超常磁性酸化鉄製剤で代用した. 以上の成果を,今後の物質弁別解析プログラムに利用する.また,血液のCT値に関しては,今後,健常な肝臓のCT値分布直線を決定する際に,同時に大血管内のCT値を測定することで取得する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画として挙げていた「至適X線管電圧の組み合わせの検討」および「分離対象物質の理論CT値の決定」を予定通り実施し,有益な情報が得られた.「物質弁別マッピングアプリケーションの開発」については,予定していた解析アルゴリズムによるマッピングは汎用の画像処理ソフトウェアにて実現できた.今後,鉄と脂肪の同時測定を可能とするアルゴリズムを含めたうえで公開・無償提供を行う.以上より,本課題はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降も当初の研究計画通り,dual-energy CTによる物質弁別システムの確立に向けた検討を進めていく予定である. 特に平成28年度における最も重要な課題は,肝臓の鉄沈着や脂肪変性,脳梗塞に伴う浮腫や出血といったCT値の変化を捉えるために,基準となる健常な臓器がもつCT値の直線状の分布を解明することである.そのため,臨床的にdual-energy撮像がなされた腹部および頭部CT検査の結果が正常と考えられる患者の肝および脳のCT値分布を求め,その近似直線を算定する.肝臓を50例,脳を50例,合計100例のデータ収集を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,購入予定であった電子密度ファントムを近隣施設より借り入れることができた.ファントムを用いた基礎実験の成果が予定よりも早く得られたため,次年度に予定していた国際学会における発表を前倒しして行った.ファントム実験において,肝臓から鉄濃度と脂肪含有率の両方を同時に測定するアルゴリズムの実現が示唆されたため,従来の想定よりも大きな規模の解析環境が必要となった.以上の理由により次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
1)肝鉄濃度および脂肪含有率同時測定アルゴリズムの開発環境の構築費用に充てる. 2)本研究に関連した最新の学術情報を収集するとともに,研究成果をいち早く世界に発信するため,国内外の学会参加費用および旅費,国際誌への投稿経費に充てる.
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