研究課題/領域番号 |
15K21018
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
多田 薫 金沢大学, 医学系, 助教 (90543645)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 牽引 / 可動域 / 手関節 / 橈骨手根関節 / 手根中央関節 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、 ①牽引を加えた手関節の可動域訓練の臨床例における有効性を明らかにすること ②牽引を加えた手関節の可動域訓練を行う医療用器具を開発し臨床応用すること の2点である。 ①については、まず橈骨遠位端骨折の術後例を対象に、どの関節が可動域制限の原因となるのかを評価した。その結果、可動域制限の原因となるのは橈骨手根関節であるという結果が得られている。この結果は牽引を加えた可動域訓練が橈骨遠位端骨折後の可動域制限に対して有効である可能性を示唆しており、本年度も症例数を増やして検討を続ける予定である。臨床例に対する有効性の評価についても、おおむね計画通りに評価を進める予定であるが、当初予定していた無作為割り付けによる比較検討ではなく、同一例における牽引/非牽引の効果の違いについて比較検討する予定である。 ②については、すでに小型の装置を開発しており、MRIを用いた評価に使用している。現時点ではあくまで評価用の装置という位置づけであり、本年度は臨床応用に向け外観や安全性について改良を加えてゆく予定である。MRIを用いた検討では、手関節の牽引により橈骨手根関節に比べ手根中央関節がより開大する事、開大は手関節の掌背屈角度によって異なる事、が判明している。なお、MRI画像の画質が想定よりも良好であったことから、本年度は本装置を用いてMRI撮影を行い、手根骨の三次元的な運動解析も追加で行う計画としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは橈骨遠位端骨折に対し手術を行った場合に、手関節においてどのような可動性の変化が現れるのかを評価する必要があると考え、橈骨遠位端骨折に対して金属プレートを用いて手術を行った10例を対象とし、術後6か月の時点でレントゲン撮影による評価を行った。評価は通常の手関節正面像、側面像に加え、手関節最大掌屈位、最大背屈位における手関節側面像を撮影した。中間位から最大背屈位にかけて、また、中間位から最大掌屈位にかけての運動の中で、橈骨手根関節の角度および手根中央関節の角度が、手術を行った患側と健側とでどのように異なるかを評価した。その結果、橈骨遠位端骨折の術後は、骨折部に近い橈骨手根関節の可動性が低下することが判明した。すなわち、橈骨遠位端骨折の術後は、牽引を加えた可動域訓練を行うことにより、可動域がより改善する可能性があるという結果が得られた。
また、牽引の作用機序についても検討した。牽引により橈骨手根関節、手根中央関節がどのように開大するかについて、これまではレントゲン画像による二次元の評価を行ってきたが、MRIによる三次元の評価を行った。まずは評価を行うため、MRI撮影が可能な小型の手関節牽引装置を開発した。本装置は手先部および前腕部から構成されており、手先部と前腕部とは回転軸により連結されている。手関節牽引時には前腕を前腕固定具に、手先を手先固定具に固定し、手先部から手関節に牽引を加える構造となっている。装置材料は主にポリアセタールを使用し、締結部や回転軸、スライダ等の強度が必要な部分に対しては非磁性金属であるチタン合金や特殊アルミニウム合金を使用した。その結果、牽引により橈骨手根関節に比べ、手根中央関節が開大することが明らかとなった。ただし、中間位、背屈位では牽引による有意な開大が認められたが、掌屈位においては有意差を認めず、肢位により牽引の効果が異なることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
MRIを用いることで、CTのような被ばくを伴わず非侵襲的に三次元の評価を行えることから、牽引、非牽引時の手根骨の位置関係や運動について、MRIによる評価を継続する予定である。 これまでの研究で使用していたレントゲン写真の連続撮影が可能なflat panel ditectorが当院から撤収されたため、別のメーカーの同等品を注文している状況である。2016年秋には使用可能となる見込みであり、レントゲン写真による評価は秋以降にまとめて行う予定としている。研究期間が短くなるため、臨床例に対する評価は当初予定していた無作為割り付けではなく、各症例における牽引、非牽引時の動態撮影による評価を行う予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費、謝金が想定していた額に及びませんでした。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に充填する予定です。
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