牽引力及び牽引方向を定量化可能な実験装置を使用して、他動掌背屈運動時の橈骨手根関節及び手根中央関節の挙動についてMRIにより評価した。 健常成人10名10手を対象とし、非牽引下に手関節中間位、40度背屈位、40度掌屈位の各肢位でMRI撮影を行い、その後牽引力を40Nに設定し、手関節中間位、40度背屈位、40度掌屈位の各肢位でMRI撮影を行った。MRI矢状断面像を使用し、橈骨手根関節(RL関節)の角度と手根中央関節(CL関節)の角度を計測した。関節間距離はRL関節及びCL関節の各関節に対して1スライス当たり5ヶ所を8スライスで計測し、合計40ヶ所の平均値で評価した。 牽引により角度変化量はRL関節では中間位で約6度、背屈位で約5度有意に増加した。掌屈位では約2度増加したが有意差はなかった。手関節角度が一定であることからCL関節ではRL関節とは逆の傾向を示した。牽引により関節間距離はRL関節では中間位で0.10mm、背屈位で0.10mm有意に増加したが、掌屈位ではほぼ変化がなかった。CL関節では牽引により中間位で0.16mm、背屈位で0.25mm有意に増加した。掌屈位では0.07mm増加したが有意差はなかった。 手関節の牽引により中間位及び背屈位において月状骨が背屈方向に回転し、RL関節角度変化量が増加した。この効果は橈骨手根関節の可動域回復を目的としたリハビリテーションに有効であると考える。牽引によりRL関節及びCL関節の骨間距離は中間位、背屈位で開大したが、このことは牽引による橈骨手根関節の角度変化量に影響している可能性があると考えられた。
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