研究課題/領域番号 |
15K21019
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90444207)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面錯体モデリング / 水質復元 / フブスグル湖 / ウラン |
研究実績の概要 |
ユーラシア大陸内部は気候変動に敏感な地域であり、バイカル湖やフブスグル湖の湖底に蓄積された堆積物には過去数10万年に及ぶ気候変動の歴史が記録されている。フブスグル湖の湖底堆積物コア中のウラン濃度は年代によって変動することが確認されている。 ウラン濃度変動の原因として、堆積物中のウランは鉄酸化物への吸着を起源とし吸着量の大小は水質条件に依存することに関係していることが考えられる。したがって鉄酸化物へのウラン吸着挙動に影響を与える水質因子を解明し吸着反応を適切にモデル化することができれば、堆積物中ウラン濃度の変化に対応した湖沼の水質を復元することができる可能性がある。 本年度は鉄酸化物へのウラン吸着挙動におよぼすCO2の影響を実験的に精査した。さらに前年度までに得られたCO2を除外した系におけるウラン吸着挙動を表面錯体モデリングによって解析した。表面錯体モデリングでは、鉄酸化物によるウラン吸着はバイデンテート型内圏錯体と、ウラニル炭酸からなるターナリーモノデンテート錯体を仮定した場合、モデルは実験結果を再現できた。また、各表面錯体生成反応の平衡定数を見積もることができた。本研究で構築したモデルをフブスグル湖堆積物に認められるウラン濃度変動に適用することで、過去20万年にわたるフブスグル湖の水質変動の復元を試みた。その結果、堆積物にウラン濃度が含まれない時期はpHが9.5以上であり、ウラン濃度が特に高い時期はpH8.6前後であることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はフブスグル湖の水質条件に制約を与えることを目指して研究を行ったが、最終的にいくつかの仮定は必要とされるものの、定量的にpHやイオン強度を復元することができた。一方現在のところ論文執筆中であり、当初予定した成果報告にまでは至っていない。したがっておおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
成果を論文としてとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
鉄酸化物によるウランの吸着挙動に及ぼす水質因子の影響を明らかにし、理論モデルを介して様々な水質条件におけるウラン吸着挙動を予測することに成功した。またフブスグル湖の湖沼堆積物に認めらていたウラン濃度の変動から、フブスグル湖の過去のpH変動を復元することに成功した。十分な研究成果が2年間で得られたが、当該成果の報告は十分ではない。そのため、研究期間を延長承認を行い、学会発表及び論文投稿を次年度に行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
・地球惑星連合大会および地球化学会の参加および発表(2名) ・論文校閲(2件) に使用予定。
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