研究課題
本研究は、がん術後に発症する上肢リンパ浮腫の早期アセスメントに繋がる特徴を明らかにすることをゴールとして、真皮・皮下組織構造をエコーで明らかにし、臨床導入に向けたポケット型エコーの妥当性評価を行った。本課題では、早期リンパ浮腫をターゲットとし、乳がんに対する腋窩リンパ節郭清術を受けた後、浮腫所見が生じていない段階の者と定義した。研究1では、横断観察研究で早期リンパ浮腫患者の真皮・皮下組織構造を明らかにした。乳がん術後の早期リンパ浮腫患者12名、リンパ浮腫ISLII期患者16名、健康成人16名を対象とした。エコーは真皮観察に20MHzプローブ、皮下組織観察に10MHプローブを用いた。いずれも、前腕内側部に長軸にプローブを当てて画像を獲得し、真皮厚・真皮低輝度所見割合(LEP)・皮下組織厚を算出し比較した。この結果、周囲径、真皮厚・LEP・皮下組織厚の、左右前腕内側部での左右比の3群比較では、皮下組織厚のみで早期リンパ浮腫群と健康成人群に違いが見られた。早期リンパ浮腫評価として、皮下組織厚計測が特徴的なパラメータである可能性が示唆された。この成果から、研究2として臨床導入に適するポケット型エコーの皮下組織厚計測の妥当性を検証した。横断観察研究で、対象は健康成人51名の102肢とした。前腕内側にエコープローブを長軸に当て皮下組織厚を計測し、ポケット型と高性能エコーの誤差範囲(LoA)及びBland-Altmanプロットによる妥当性評価を行った。ポケット型エコーは高性能エコーと高い相関を示し (R2 = 0.86; P < 0.01)、Bland-Altman plot では、ポケットエコーの方が0.320 mm厚かった (LoA: -0.64 to 1.28)ものの、5.0㎜以内の皮下組織厚で高い妥当性が示され、早期リンパ浮腫患者への適用が示唆された。
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