グラフェンは、酸素を含む多くの反応物質に不活性である。トンネル磁気抵抗(TMR)デバイスの一種である Graphene Passivated Ferromagnetic Electrodes(GPFE)デバイスでは、強磁性体金属であるニッケル(Ni)にグラフェンの膜(G/Ni)を一層張ることによって、Niの酸化を防ぐことが明らかになっている。本研究では、量子シミュレーション「密度関数理論(DFT)」を用いてG/Ni配座構造によってGPFEにおいてG/Niのハーフメタリックの特性を得た。グラフェンとNiの配座構造がブリッジ構造とトップ構造であることを解明した。この構造では、スピンアップ状態でバンドギャップを開けることができ、スピンダウン状態では金属状態を得た。ハーフメタリックとは、スピン分極した系において、一方のスピンの側ではバンドギャップが開き (絶縁体的なバンド構造)、もう片方のスピン側では価電子帯の電子は完全に満たされていない(金属的なバンド構造)。そのため、ハーフメタル材料ではフェルミエネルギーの電子は一方のスピン状態しかとることができない。ハーフメタル材料はスピンフィルタ材料として期待が高まっている。ハーフメタルを使用すると、磁気トンネル接合(例:GPFE)は無限トンネル磁気抵抗(TMR)を示す。G/Niのハーフメタリックの特性がグラフェンの対称性に関連していることを理解した。これらの成果をまとめ,学術雑誌であるApplied Surface ScienceにLetterとして出版した。さらに、日本、アメリカ、オーストラリアの物理学会に口頭発表で報告した。
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