研究課題
テラヘルツ帯ジャイロトロンの実用化,広範な応用展開に向け,重要課題である電子銃の高性能化に取り組んでいる.本研究では,含浸カソードの昇温部の熱絶縁構造を最適化し,含浸領域(エミッタ)以外の部分からの熱電子の不要放出を抑えて長寿命化を図った.今年度は,昨年度までに行った電子ビーム特性評価実験,及び計算機シミュレーションとの比較の結果を踏まえ,熱絶縁構造が電子ビーム性能へ与える影響を明らかとした.この知見に基づいて熱絶縁間隙の配置を見直し,不要放出の危険性を大幅に低減した最適化電子銃を,複数のジャイロトロン(下記 [1-2])に適用した.[1] 270~420 GHz 多周波数発振ジャイロトロン現在開発中の 270~420 GHz 二次高調波多周波数発振ジャイロトロンへ搭載する専用電子銃を開発した.このジャイロトロンは,多用途で長時間の連続運転が求められるため,電子銃の長寿命化の意義は非常に大きい.まず,試作共振器と既存の電子銃を用いて発振試験を行い,電子ビーム特性を評価して改善すべき事項を明確化した.既存電子銃では,生成される電子ビームの性能が充分でなく,安定発振しない共振器モードが存在した.最適化電子銃の設計においては,長寿命化に加え電子ビーム性能の改善も図った.結果,全ての設計モードに対し,必要なビーム性能を与える電極構造の作成に成功した.[2] 303 GHz 高出力パルスジャイロトロンこのジャイロトロンでは電子ビーム電流が非常に大きく,不要放出の影響が特に大きい.その為,エミッタ部のみを熱絶縁した構造を採用している.本管の電子銃では,エミッタ幅に比して熱絶縁間隙を可能の限り狭くすることで,熱絶縁間隙が電子ビーム特性へ与える影響を最小化した.当初の目標であった 300 kW を大幅に超える出力を 30 % 以上の高効率で実現し,最適化電子銃の性能を実証した.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件)
Plasma and Fusion Research
巻: 12 ページ: 1206013-1-2
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Journal of Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves
巻: - ページ: 1-21
10.1007/s10762-017-0385-y
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Physics of Plasmas
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10.1063/1.4962575