本研究は、幼児期の子どもが「秘密とは特定の情報を隠ぺいすることである」という理解を何歳頃に獲得するのか、また、どのような情報を秘密とし、情報を共有・非共有する他者は誰なのかという点に検討し、日常のコミュニケーションの観点から幼児期の自他理解の発達を明らかにすることを目的としている。2015年度は次のような研究をおこなった。 1)秘密はある情報の共有を通して「私」と「他者」との距離を近づける一方で、ある情報を隠蔽する時にはその距離を遠ざける役割も果たす。また、秘密は「私」と「他者」との距離を自覚する必要があるという点で、日常のコミュニケーションにおける心の理解の発達と関連していると考えられている。秘密や嘘など自分の気持ちを隠す場面に関する文献を集め、秘密が他者との関係の中でどのように作用するのかについて整理をおこなった。 2)幼児にとって秘密がどのようなものであるかを実証的方法で検討した研究は数少ない。そのため、幼児がどのような時間帯、場面、方法で秘密にする行為や秘密という言葉を使用するかについて注目してエピソードを収集した。
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