研究課題/領域番号 |
15K21035
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鍵山 善之 山梨大学, 総合研究部, 助教 (30506506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 計算機支援外科 / 手術計画 / ビッグデータ / 統計アトラス / 術前支援 / 人工股関節全置換術 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,整形外科人工股関節全置換術を対象とした術前,術後を含む手術情報管理及び医療ビッグデータ活用による学習循環型手術支援フレームワークの開発である.本研究では,全社のインプラントを包含的に管理する仕組みや数千,数万人分の術前計画,術後評価情報をまとめて管理できるデータフォーマットを策定し,そのビッグデータの有効活用及び匿名共有化を容易にする.また,ビッグデータの統計解析にもとづく術前計画最適化や術後予測等を実現し,循環学習による自動改善及び医師間でノウハウを共有可能な手術支援フレームワークを構築する. 本年度は,大阪大学大学院医学系研究科高尾正樹助教,奈良先端科学技術大学院大学佐藤嘉伸教授,大竹義人准教授に協力いただき,前年度に策定した医療ビッグデータ対応共通XMLデータフォーマットを用いた学習循環型手術支援フレームワークの運用プロトコルを試作した.本プロトコルにもとづき,整形外科の症例データからDDR AP画像でのインプラント数リスト化や紙による手術記録のデータベース化する仕組みを整え,本研究が対象としている人工股関節全置換術を容易に抽出するようにした.また,フレームワークにおける学習データのバージョンを管理をできるようにした.評価実験では,適用した症例241例からプロトコルに従って得られた100例に対し,同一医師が立案した品質の保証された47例を学習データとして術前計画最適化を行い,専門医と同等,また脚長差については有意によい結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,まず学習循環型手術支援フレームワークへのデータ追加入力を行うためのプロトコルを試作した.整形外科に蓄積されている症例データは,対象としている人工股関節全置換術以外の異なる手術のデータも含んでおり,データベース化にあたり,手術のタイプ,使用インプラント,罹患側等の情報を電子化し,分類抽出する必要があるほか,学習データのバージョン管理も行う必要があるため,本プロトコルに応じたフレームワークの改良も行った.今回新たに追加した241例を適用したところ,利用可能な人工股関節全置換術症例データとして100例が得られ,術前計画最適化に使用した.学習データについては,同一専門医による品質の保証された47例を最初の学習データバージョンとして適用した.評価実験の結果,全ての評価値で専門医と同等,もしくは有意によい(脚長差)結果が得られた.術前計画データは全て前年度に策定したXMLデータフォーマットにより記述,管理された.このようにテスト運用に必要なプロトコル作成や試験運用も予定通りに進捗したことから,全体としておおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
大阪大学医学部附属病院に保管されている症例データを本年度に策定したプロトコルにより分類抽出し,学習・評価用データの更なる追加適用を行う.複数の学習データバージョンによる循環型学習支援サブモジュールでの性能比較評価実験を行い,臨床的観点から有用性分析を実施する.その結果から,ビッグデータの有効的な活用方法や選別方法について検討を行い,フレームワーク全体の改良を行っていく.電子フォーラムについては,研究協力者である大阪大学大学院医学系研究科高尾正樹助教に試験運用してもらい,術前計画最適化前の使用学習データバージョンの自動示唆などの助言ができる仕組みの構築とその評価を実施する.電子フォーラムの試験運用結果によっては,大阪大学付属病院やその関連病院における試験導入についても検討する.また,これまでデータベース組み込みの際に除外してきた人工股関節全置換術以外のインプラント置換術についても本フレームワークを適用できるかどうか検討を行う.
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