研究課題
超高齢化社会の進行に伴い、国民の医療費削減および健康維持増進は大きな課題となっている。健やかで心豊かな社会の実現に向け、食生活の重要性を啓発する手段として食品機能表示制度のリニューアルが行われ、科学的根拠のある機能性食品の普及と利用促進に期待が高まっている。本研究では、脂質吸収経路であり腸管免疫細胞の輸送路でもある腸間膜リンパ管に焦点を当て、腸管における脂質吸収と免疫機能を評価する食品機能評価法の確立を目的とした。初年度は計画に基づき、実験動物(Wistar系雄性ラット等)を用いて脂質(ココアバター等)あるいは生理食塩水を経口投与し、一定時間経過後に、麻酔下にて腸間膜リンパ管にカニューレを挿入し経時的に6時間まで1時間ごとにリンパ液を回収した。1時間ごとに得られたリンパ液の成分解析(脂肪酸組成、サイトカイン量)やリンパ球サブセット解析を行い、脂質投与時と生理食塩水投与時での比較を行った。その結果、投与した脂質に含有しない脂肪酸(アラキドン酸、DHA、EPA)がリンパ液中から検出されること、脂質投与の経過と共にB細胞比率が上昇してくることを見出した。サイトカイン分析については現在データ分析と検証を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、実験動物に腸間膜リンパ管へのカニュレーションを施し、経時的にリンパ液を回収し、リンパ液中の成分分析等を実施できた。免疫学的視点からの若干の評価ができ、投与した脂質による免疫機能への影響について検証できる実験基盤を作ることができた。このことから達成度としては、おおむね順調と考えている。
初年度に得た実験データを増強し、さらに検証を進めるため、実験例数を増やし、免疫学の研究者からの助言やご意見を参考にしながら、近年注目がされている自然リンパ球(ILC)との関連性についても検討したい。さらに、本実験で確立した評価方法を利用して、各種食品素材(発酵食品・伝統食材など)の腸管免疫への影響について評価する計画である。また、ウサギ等を用いた腸間膜リンパ管へのソナゾイド投与試験を計画し、腸管リンパ液の動態等を超音波診断装置によって可視化する実験にも取り組む。
当初見込んでいた経費よりも安価に試薬類を購入することができたため、次年度使用額8,779円が生じた。
次年度使用額については、平成28年度請求額と合わせて試薬・消耗品等の購入に使用する。詳細としては、試薬(脂質吸収阻害剤)や消耗品類(注射筒、チューブ類など)を予定している。
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Aging Cell
巻: 14(4) ページ: 582-594
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Abdominal respiration induces hemodilution and related reduction in ADH concentration of blood.
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