研究課題/領域番号 |
15K21039
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上原 三知 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40412093)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ランドスケープ・プランニング / 自然災害 / 被災地の開発履歴 / 代替案の可能性 / 費用対効果 / レジリエンス / 社会コスト / ライフサイクルアセスメント |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は次の通りである。収集した各被災地における人工改変地(おもに住宅)の開発履歴、経緯に関する研究成果の統合整理を行ない、研究の目的に沿って検討を加え、不足している情報を検討し、追加収集を行なった。 特に各対象地において被災した人工改変地の履歴に関しては、地誌や町史などの資料のレベルにバラツキがあったために、すべての被災地で同レベルの比較が可能な、高解像度の空中写真画像と、それを用いたAgisoft PhotoScanによる3D土地利用モデルの作成を行った。 その結果、いずれの対象地における被災した人工改変地は、第2次世界大戦後や、高度経済成長期に山林や、原野であった場所が開発された地区であることが確認できた。 また、当初の予定より先行して、福島県の浜通りにおける福島第一原子力発電所の開発履歴に関しては、より詳細な文献調査と、Q-GISによる敷地選定のプロセスの代替案の可能性を分析した。そこでは、福島第一原子力発電所の敷地が、沿岸部に設置されたこと、3つの取水方法が検討されたが、その中で最もコストが安価な現在の施設配置になったことを指摘した。その上で、ランドスケープ・プランニング手法の代表例であるIan McHargのエコロジカル・プランニングでは、原子力関連施設や、オフサイトセンターの立地環境においても相対的にみれば耐震性が弱い部分が存在すること、卓越風の向きを考えると内陸部に汚染物質が拡散する可能性があることが指摘できたことを明らかにした。 その結果は、各国の環境のレジリエンスを研究する研究者と合同で執筆したSpringer(Holland)の査読付き英語論文として採択され、本年度出版されることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各被災地における人工改変地(おもに住宅)の開発履歴、経緯に関する研究成果の統合整理に関しては、地域毎の情報量や精度に大きなバラツキがあったために、全国的にも今回の調査地間においてもほぼ同一精度で情報が活用できる航空写真画像から被災した人工改変地の開発履歴を把握することにした。その成果の一部を日本造園学会中部支部大会において発表した。 また当初の予定より先行して実施した福島県の浜通りにおける福島第一原子力発電所の開発履歴とその代替案の可能性については、より詳細な文献調査と、Q-GISによる敷地選定のプロセスの可視化を進め、その成果の一部Springer (Holland)の査読付き英語論文として投稿し、出版が決定した。
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今後の研究の推進方策 |
比較・統合的考察を行なう過程で、各敷地における基本情報にバラツキがあることが明らかになった。よって今後は、航空写真や、地質、地形、植生・土地利用など同じ精度で入手・利用可能なデータベースに焦点を当てて、各被災地におけるランドスケープ・プランニング手法によって提案が可能な(可能であった)敷地計画の代替案の作成プロセスを検討し、その上で各被災地の現場の踏査を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
各被災地における人工改変地(おもに住宅)の開発履歴、経緯に関する研究成果の統合整理に関しては、地誌や町史など地域毎の情報量や精度に大きなバラツキがあったために、1年目に予定していた各被災地の調査を翌年へ持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
全国的にも今回の調査地間においてもほぼ同一精度で情報が活用できる航空写真画像から被災した人工改変地の開発履歴を把握することにし、その情報を整理した上で次年度使用額とH28年度請求額と合わせて現地調査の実施に使用する計画としている。
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備考 |
慶應義塾大学総合政策学部の厳網林教授が主催する東日本大震災の被災地における国際ワークショップへ参画し、オランダーのRob Roggema博士、オーストラリアの Luke Midton氏ともに総合的なランドスケープデザインの視点がどのように被災地に対して持続的でレジエンスが高い計画に寄与するのかについて議論することができた。
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