研究実績の概要 |
本研究は主に2つの目的で実施された。①開発と保全のバランスを図るランドスケープ・プランニング手法 (以下L・P手法)の災害の予防効果や開発結果の有用性を定量的に評価する。②東日本大震災、集中豪雨による土砂災害など、実際に大規模な被害を受けた開発地(福島県、伊豆大島、広島市)を対象に、自然立地的土地利用計画、Ecological Planning(E・P)、Swarm Planning (S・W)のなどの、L・P手法による住宅開発が実現した場合の被害や、その後の復興・補償費用の軽減効果について試算を行った。 4年間の研究から、伊豆大島、広島(緑井、八木地区)の土砂災害で被災した住宅開発地は、自然立地的土地利用計画、E・P、S・Wの手法による計画では実際の被害を受ける場所以外の適地を選択させた。実際の被災面積は約半分から2割に減少し、特に地形が急峻な伊豆大島で手法間の差が大きいもののそれでも被害面積を半分以下にできた。その家屋被害および死者被害額は最大で広島災害で60%、伊豆大島では95%も軽減できる可能性があった。福島県における東日本大震災後の住宅移転計画における実際のE・Pを活用した移転計画では災害リスクの軽減と、再建された住宅地の価値を高める可能性も検証できた。その成果は、Resilience by Design of International Federation of Landscape Architects 2018, Natural Disasters and Weather Extremes部門でOutstanding Awardsを受賞し、一部論文としてもまとめられた。 急激な人口減少及び高齢化に直面するわが国において、トータルの社会資本の投下をなるべく抑え、持続的かつ安全で快適な地域開発が行うためにランドスケープ・プランニング手法が活用される意義は大きい。
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