本研究は,我が国の高等教育界において,長らく等閑視されてきた学生の地位や権利を積極的に評価する観点から,とりわけ大学ガバナンスへの学生参加について調査するものである。調査の範囲は,欧州における実態,および日本におけるこの種の議論の歴史的展開と現状である。 平成29年度の研究実績としては,①海外の実態に迫るべく,国内で開催されたシンポジウム等の会合に出席し情報収集に取り組んだこと。②国内における戦後の学生参加のケーススタディとして名古屋大学理学部物理学教室について調べたことの2つが大きな柱であった。 特に②の名古屋大学の事例については,これまでの先行研究が触れてこなかった一次史料レベルの調査を展開できた。具体的には,名古屋大学において戦後すぐの様子を記録した一次史料を発掘したことをあげることができる。昭和20年代の同大学物理学教室の運営への学生参加については,同教室の実質的な運営を担った物理学者坂田昌一の手による講演録や,当時の会議の議事録など,多数の簿冊にたどり着くことができた。これらは,名古屋大学坂田史料室に存在するが,ここ以外にも同大学の大学文書資料室に多数保存されていることを突き止めた。 また,この②に関しては,昭和期の同大学物理学教室を実際に知る人物に複数回面会し,話を聞くことも実現した。これらの研究から得られた知見を,平成29年10月に日本女子大学で開催された日本教育行政学会の年次大会で報告した。
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