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2016 年度 実施状況報告書

児童養護施設で暮らす子どものレジリエンスに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K21044
研究機関静岡大学

研究代表者

井出 智博  静岡大学, 教育学部, 准教授 (20524383)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード児童養護施設 / レジリエンス / 規定要因 / 自立支援
研究実績の概要

前年度の先行研究のレビュー,及び基礎調査に基づいて,児童養護施設児童のレジリエンスの特徴を理解するための質問紙調査を実施した。対象は児童養護施設で暮らす中高生(施設児童)と,一般の中学校,高校に通う生徒(家庭児童)である。調査によると,施設児童は全般的に家庭児童に比べてレジリエンスが低いことが明らかになった。また,施設児童について,虐待経験の有無によるレジリエンスの特徴を比較したが,虐待経験がレジリエンスの様相を規定する要因とは言い切れない可能性が示された。本調査で用いたレジリエンス尺度は,困難に直面した際,自分で何とかしようとする傾向(自己志向性),人を頼って何とかしようとする傾向(関係志向性),困難そのものを楽観的に評価しようとする傾向(楽観性)の3つの因子から構成されている。これらの因子を用いて,施設児童にどのようなレジリエンスの特徴を持つタイプがあるかについて検討したところ,男子ではすべての因子が高い群,低い群,中程度の群の3群に分類され,女子ではすべての因子が高い群と低い群,自己志向性と楽観性は低いが関係志向性は高い群の3群に分類されることが明らかになった。これらのことから,女子児童では他者に頼るということが困難を乗り越える重要な要因となる可能性があることが示され,女子児童への自立支援では,困難に直面した時に頼るべき他者の存在が重要であることが示唆された。また,いずれの因子得点も低く,困難に直面した際にいかなる対処もとりにくい子どもたちがいることが分かった。施設児への自立支援ではいずれのレジリエンスの低い児童に対する支援をどう進めるかが重要な課題となることが示された。また,そうした研究と並行して,施設児童の生い立ちに関連するデータを収集している。今後はそうしたデータとレジリエンスの特徴の関連を検討し,施設児童のレジリエンスに影響を与える要因についての検討を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画においては1年目に文献研究,2年目に質問紙調査を実施することを計画していたが,おおむね予定通りに進行している。特に2年目については,15か所ほどの児童養護施設で暮らす子どもたち,およびその施設職員を対象とした質問紙調査を行った。現在のところ,数施設から調査票が完全には回収されていない状況にあるために,データの分析には若干の遅れが生じている。しかし,分析はすでに回収された施設のデータを用いてすでに進められているため,研究課題全体の遂行に対しては大きな問題とはなっていない。また,3年目の研究課題として施設退所者のインタビュー調査を実施する予定であり,その対象の選定を2年目の途中から行う予定であった。各施設に趣旨説明を行い,同意をもらっているが具体的な対象の選定にまでは至っていないので,この点については早急に進める必要がある。

今後の研究の推進方策

2年目に行った質問紙調査の分析は継続して進め,研究成果については平成29年度内の学会等において順次報告する。3年目の研究課題として,インタビュー調査が中心的な研究活動となるため,インタビュー対象の選定を早急に進め,7月以降,インタビュー調査を実施することを予定している。また,その成果については10月をめどに分析を開始し,年度内に分析を終える予定である。

次年度使用額が生じた理由

質問紙調査,及びインタビュー調査実施の遅れがあり,データ分析の一部とインタビュー調査旅費等の支出が次年度に繰り越すことになったため。

次年度使用額の使用計画

質問紙調査のデータ分析の残りを進めるために必要な統計ソフトの購入,及びインタビュー調査に係る旅費,謝金等に支出する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 児童養護施設で暮らす子どものレジリエンスの特徴2017

    • 著者名/発表者名
      井出智博
    • 雑誌名

      福祉心理学研究

      巻: 14(1) ページ: 44-53

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 虐待を受けた児童を担任する際に教師はどのようなことに取り組むのか -『シーラという子』の分析を通して2017

    • 著者名/発表者名
      井出智博
    • 雑誌名

      静岡大学教育学部研究報告(人文・社会・自然科学篇)

      巻: 67 ページ: 59-73

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Foresight is Partially Formed from Resilience: The Relationship Between Self-Esteem and Future Time Perspective Among Japanese High School Students2017

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Takagishi, Tomoko Kuraoka, Tomohiro Ide
    • 雑誌名

      International Journal of Education, Culture and Society

      巻: 2 ページ: 76-82

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 児童養護施設児童のレジリエンス促進要因としての自尊感情 ‐多母集団同時分析による過程で暮らす子どもとの比較検討‐2016

    • 著者名/発表者名
      井出智博
    • 学会等名
      日本心理臨床学会第35回大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-09-04 – 2016-09-07
  • [学会発表] 児童養護施設におけるキャリア・カウンセリング・プログラムの実践と効果の検討2016

    • 著者名/発表者名
      井出智博,片山由季
    • 学会等名
      日本人間性心理学会第35回大会
    • 発表場所
      九州産業大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-08-26 – 2016-08-29
  • [学会発表] How do we overcome problems with the case conference in Japan ?2016

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro IDE
    • 学会等名
      the 12th WAPCEPC
    • 発表場所
      CUNY Graduate Center(New York City, USA)
    • 年月日
      2016-07-20 – 2016-07-24
    • 国際学会
  • [学会発表] 施設で暮らす子どもが自分の将来像を描けるようになるために2016

    • 著者名/発表者名
      井出智博
    • 学会等名
      日本福祉心理学会大14回大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-07-02 – 2016-07-03
  • [学会発表] 児童養護施設児童のレジリエンスと時間的展望の関連2016

    • 著者名/発表者名
      井出智博
    • 学会等名
      日本福祉心理学会第14回大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-07-02 – 2016-07-03

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公開日: 2018-01-16  

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