研究課題
前年度までの研究(第1研究)で,児童養護施設で暮らす子どもは家庭で暮らす子どもに比べてレジリエンスが低いことや男女によってレジリエンスの様相が異なることが明らかになった。今年度は施設で暮らす子どものレジリエンスの予測要因を明らかにすること(第2研究)と,施設から巣立った後,成功的な自立を遂げ,適応的な生活を送っている施設出身者へのインタビュー調査を通して,彼らのレジリエンスを育むことに関連した要因を検討すること(第3研究)を試みた。第2研究では,施設で暮らす中学生,高校生を対象とした調査によって,児童期までに性的虐待や施設内での性被害などの性的被害体験がないことや,慢性的な身体疾患がないこと,子ども時代の運動神経の良さがレジリエンスの促進要因として抽出された一方,女性であることが抑制要因となっていることが明らかになった。また第3研究では一定の基準により選出された,20代~30代の成功的適応を遂げた施設出身者に対するインタビュー調査から,彼らのレジリエンスを育んだ要因が明らかになった。例えば,施設で暮らしている間の施設職員との個別の関係や同じような境遇の子どもたちの関係は彼らの育ちの支えとなっていた。また保護者などの家族も支えとなる一方で,「ああはなりたくない」と反面教師として見る視点を持ち,「こうなりたい」という将来目標や展望を持つことに繋がっていることが示された。また,そうした反面教師として見る視点を持つためには,教師や施設外の友人,恋人など様々な人との良好な関係があり,自分の源家族と適当な距離が保てるようになることが必要であることも示された。大学に進学することは知識や技術を身に付けるだけではなく,多くの価値観に触れ,おとな時代を生きる仲間を獲得するという意味でも施設出身者には重要な機会となることも示唆された。
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福祉心理学研究
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