研究課題/領域番号 |
15K21050
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 正志 静岡大学, 教育学部, 准教授 (00599912)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 公民連携 / 信頼 / 指定管理者制度 / 市町村合併 / 縁辺地域 / ローカル・ガバナンス |
研究実績の概要 |
本年度は、公民連携の信頼構築に関する地方圏での現状を把握するにあたり、①指定管理者制度にかかる全国的動向の解明の継続、②地方圏における公民連携の長期的動向について調査を進めた。 まず、①については過去の研究と比較して、2012年時点では企業・NPOとも同一自治体内に所在する団体の選定が増加する反面、大都市圏など遠距離に拠点を置く団体の選定割合は減少していた。ただし、スポーツ施設や駐車場といった分野では、大都市圏に本社を置く企業が地方圏での指定管理者になる傾向が強まっている傾向も示された。同一自治体内に所在する組織との連携増加は、施設管理運営の信頼構築に大きく影響を及ぼすことが想定される。 ①と地方圏を取り巻く状況に鑑み、②では合併を経験した自治体と、縁辺地域に位置する事例を対象に、体育施設の管理運営を中心とした連携の実態を調査し、信頼の構築を検討した。まずいずれの自治体とも、同一団体が指定管理者として継続しているが、行政側が施設管理運営や財政面を高く評価していることが大きく働いている。また、定期会合のような公的な接触の場のみならず、事業に応じた柔軟な対応を打ち出している。しかし、合併自治体では行政がコスト削減への圧力やファシリティマネジメントの導入、および新自治体内での料金等の平準化といった点を求める動きが強まっている。 一方で、受託する企業・NPOについて、合併自治体では各団体とも掲げたNPOとしてのミッションの実現に向けて、公民連携を位置づけ行政との継続的な関係構築を進めている。しかし、都市部では健康増進やスポーツそのものの振興が公民連携に位置づけられているのに対し、山間部では地域生活拠点のあり方が公民連携の中心に位置づけられており、その違いが合併後の施設運営をめぐる行政との意識差や連携に対する意向の差として顕在化していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
公民連携の実態について、行政のヒアリングおよび資料収集はおおよそ完了したが、企業やNPOの実態については、ヒアリング先の選定遅れや先方の都合、公表データの資料収集と分析が中心であったため、社会教育サービス運営の実態にかかる直接的な動きまで把握できなかった。今年度については、ヒアリング及び同一のフェイスシートを用いた調査を、各企業やNPOに行うことで、地域間/団体間での比較を進め、地方圏の信頼構築の実態を調査する。なお、昨年度の研究実績ではフェイスシートの作成と後日回答を依頼し、その成果は得られているため、今年度も引き続き実施する。また、ヒアリング成果等を分析し、国際学会での報告に向けた精緻化を進める。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、長期的な公共サービス運営にかかる信頼関係の実態把握を継続するため、特に企業とNPOに関するヒアリングを中心とした調査を継続する。特に、平成29年度より実施している、合併市町村内部での連携の地域差と、非合併市町村での自治体内および自治体外での連携状況と長期的な関係を検討していく。 また全国的動向と具体的な事例を通じて、地方圏における公民連携のあり方と信頼の役割にかかる総括を目指す。その際地方制度改革から10年余り経過した現状の考察とともに、市町村合併の有無や、企業とNPOといった公民連携を行う主体の差異による信頼関係の構築と公共サービス運営のあり方を考察する。また、地方圏では連携を組む際に重要になる同一地域内・地域外関係といった地理的条件と公共サービスにおける連携の構築についても展望を図るとともに、地方圏での公民連携のあり方についての政策的意義を論じる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は旅費を中心にして使用を計画したが、企業やNPO、行政を中心としたヒアリング調査の遅れ、およびそれに起因した学会報告の未実施といった理由から、旅費の支出が少なくなった。一方で、物品の購入等はほぼ完了しているため、次年度はヒアリング調査を中心とし、国際学会報告も加えた、旅費支出を中心にした使用計画とする。
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