最終年度は、地方圏の公民連携をめぐる長期的な信頼の実態解明について、主に指定管理者制度をめぐる全国的動向および市町村合併を経験した地方都市、縁辺地域の事例研究を実施した。 全国的な指定管理者制度の動向について、総務省調査を用いて選定先を解明すると2012年時点では同一市内の企業・NPOの選定割合が高まる傾向が示された。しかし、専門性や規模の経済性が求められる分野では大都市圏の企業が全国進出している傾向にあった。一方で、NPOは同一市内の団体を選定している割合が高いが、スポーツや社会福祉など一部の分野では、地縁団体を母体とした団体が多数の施設を管理していた。 この結果を踏まえて企業やNPOとの公民連携が進むスポーツ分野について、旧自治体に所在するNPO法人と連携する合併自治体の出雲市、縁辺地域で地元企業と長期的連携を構築する北海道小清水町の事例を考察した。出雲市では、各NPO法人のサービス運営について自治体とは定期的な事業上の関係を持つが、各施設運営についてはNPO法人が主導して地域的対応を進めていた。他方市全体の運営では、合併前の所在地の枠組みが残存しており、市全体で統一的な運営にはなっていなかった。一方、小清水町の事例では企業と行政との間で定期的な事業調整や折衝の実施と域内の体育団体との利害調整が、長期的なサービス運営を念頭に置いた共同的な事業運営につながっていた点が示された。 以上の結果から、地方圏では長期的に安定したサービス提供を確保する上で、組織間関係論で議論される善意に基づいた信頼の構築が重視されていた。しかし、行政と各団体の一対一の関係で信頼構築が図られている反面、行政以外の団体・地域間での連携の構築までは移行していない。また、地方圏でのサービス維持上域内団体は不可欠であるが、現在の公民連携の制度上長期的な運営を実現するのは困難な状況にある点も示された。
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