自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの対人的相互反応やコミュニケーションといった中核症状と感覚処理の困難との関連に焦点を当て、データの解析を行った。 感覚処理の困難はASDの診断をもつ者の半数以上に合併するといわれている。感覚処理には、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚や体性感覚等が含まれ、症状はそれぞれの感覚の過敏や鈍麻といったかたちで出現する。ASDの感覚処理の問題は、2013年に改訂されたDSM-5で新しく診断基準として取り入れられたが、ASDの子どもや家族の支援において、感覚に関する問題を顧慮した知見はいまだ少ない。本研究における包括的症状評価の一つとして、感覚処理の問題を取り入れることで、ASD児の困難性をより詳細に捉えることができると考えた。4歳から18歳のASD児の母親に、子どもの感覚処理に関する尺度と母親の精神的健康度に関する尺度を実施した。 その結果、子どもが聴覚と触覚に関する感覚に問題を抱えていると、母親の精神的健康はより悪くなることが明らかとなった。解析結果は英文雑誌に掲載されている。また内容の一部について書籍に執筆した。最終年度は、これまでに得られたデータを再分析し、結果の論文化に努めた。また、これまでの知見を活かして、ASD児やASD児の家族への介入プログラムを実施し、データ収集を進めた。
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