研究実績の概要 |
本年度は当初の計画通り、in vitro薬剤性肝障害 (drug-induced liver injury, DILI) 予測評価系として、薬物代謝反応を考慮し、免疫および炎症関連遺伝子発現量をマーカーとすることの有用性について検証した。医薬品の臨床DILIリスクをFDAのLiver Toxicity Knowledge Base Benchmark Datasetより抽出した。96種類の薬物 (100 microMを上限とし、HL-60の生存率が70%を下回らない濃度) をHepG2または分化HepaRG細胞に24時間処置し、その培養上清をHL-60細胞に暴露させた。24時間後、HL-60細胞よりtotal RNAを抽出し、real-time PCRによりMCP-1, S100A9, IL-1beta, IL-8及びTNFalpha mRNAの発現量を測定した。各mRNA発現量のDILI予測マーカーとしての有用性はreceiver operating characteristic (ROC) 曲線に基づき評価した。HepaRG培養上清を暴露させたHL-60 (HepaRG/HL-60) におけるIL-8発現量のROC-AUCは最も高値 (0.758) であり、次いでHepaRG/HL-60におけるIL-1beta (AUC-ROC = 0.726) による予測性が良好であった。いずれの遺伝子においてもHepaRG培養上清を暴露させた方がHepG2よりもAUC-ROCが高値傾向にあることから、薬物代謝を考慮することで予測性が向上することが示唆された。予測性が良好であったIL-1beta, IL-8及びS100A9発現量において、各々cut-off値以上を示す薬剤にはscore (+1点) を与え、3遺伝子におけるscoreの総和値 (immune inducible score, IIS) を算出し、その値のDILI予測性も同様に評価した。その結果、HepG2とHepaRGのIISによるAUC-ROCはより高値 (0.819) を示し、複数のパラメーターを考慮することでDILIの予測性が向上することが明らかとなった。以上本年度は、DILIのin vitro予測試験系として、免疫および炎症関連遺伝子発現量をマーカーとした試験系の可能性を示した。
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