研究課題/領域番号 |
15K21058
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
野田 尚廣 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (10596555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 微分式系の幾何学 / 接触変換群 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,特に高階の偏微分方程式系を意識した微分方程式系の接触幾何学の一般論をさらに追及することにある。当該年度においては、昨年度主に計算の複雑性等から、思うように対象とする方程式系の構造解析が推し進められなかった反省点を踏まえ、微分方程式そのものというよりもむしろその(接触)変換群のほうに対象を移すことで、変換構造の明示的研究から興味深い方程式系の発見を目指した研究を行うアプローチをとることで、この停滞状況を打破しようと試みた。 この研究について、共同研究者の澁谷一博氏(広島大学)ならびに大学院生の吉元鷹彦氏(広島大学)と議論を交わすうち、彼らもこの課題に興味を抱くようになり、共同でこの方向からのアプローチの研究を推し進めることとなった。まずはこの方面の歴史的背景とも関わるベックルント型定理の主張である、一未知関数の二階以上の接触変換は一階の接触変換から持ち上がるという結果に関連し、リフト変換の視点から多変数一未知関数の二階の接触変換を明示的に構成することを試み、これを完遂した。また同時に制御変換の視点から、あえて0階からの接触リフトも明示的に構成し、その差が何であるかも把握する研究も行った。ここにはルジャンドル変換などの重要な変換が見え隠れする。さらにはこの接触変換群の明示的表示を、微分方程式の研究に応用するためのデモンストレーションとして、よく知られているモンジュ-アンペール方程式系がこの変換表示からどのように見えるのかについても考察し、Lie以来の古典から知られているその接触不変性を、多角的な視点からより明瞭に感じることができた。これは今後の研究の進展も期待させる、重要な成果と考えられる。研究成果は三人の共著で執筆予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に、接触変換群のほうに視点を思い切ってシフトすることで、停滞状況を回避することが出来たので、それなりに順調に研究が進んだとは感じている。特に、当該分野の研究においてしばしば感じられる事項として、古典的な側面の強さから多くのことが知られていて、もう整備され尽くされているという風潮がどうしても少なからず見受けられるが、実際研究するにつれ、無論ある程度そのような側面はあるにせよ、現代的解釈や明示性、さらには発展的課題などの視点においては、必ずしも明瞭にされておらず、その意味において古典の明瞭な整備も含めて、総合的に研究を行うことが当該分野の発展において、とても重要であると強く認識するようになった。その意味で、今回のベックルント型定理に絡んだ二階の接触変換の明示的構成とモンジューアンペールの不変性の研究は、基盤として重要な結果と考えて良いと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得た一般的な接触変換群の明示的表示をより深く分析することで、モンジューアンペールのみならずまだあまり興味を持たれていない隠れたよい微分方程式系を、できればクラスとして体系的に発見ならびに構成する方針を見つけたい。このためには、必要に応じて変換群を制限して、制御接触変換のもとで不変な方程式系をまず見つけていくなどの実験的研究が求められると思う。また、構成した接触変換の表示形から、対象とする微分方程式系として、(広い意味での)多項式の形をしたいわゆる代数型微分方程式が本研究課題としては相性が良いと感じられるため、そのような方程式系にしばらく対象を絞って議論を進めていきたい感じている。この準備段階として、古典的もしくは必要に応じてより現代的な意味での幾何学的不変式論について振り返り、それを我々の設定にうまく適用させる術を身に着ける必要があると感じている。このような方向性の研究に、引き続き澁谷氏をはじめとする共同研究者との活発な議論を通して、取り組んでいきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度において、所属機関の変更に伴い、研究活動の予定変更から経費が余り、その分が各年度に移行されるため、今年度もいくらか残った。
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