本研究課題では、19世紀におけるMonge、Lie、Darboux、 Goursat、Cartan等の研究に端を発し、国内外において現代的な定式化と発展がもたらされた一階ならびに二階の偏微分方程式系の幾何学的理論に対して、この理論の三階の方程式系への自然な高階化を与えることを目的として、研究を遂行した。最終年度は、初期段階において得られていた、二変数一未知関数の単独型方程式系と3つの連立型方程式系(過剰決定系)に対する階別冪零Lie環(不変量)を用いた分類結果(二階の方程式系における双曲性・放物性・楕円性に相当するカテゴリー分類の明瞭な定式化)を再考し、これを定義方程式から明示的に判定する方法について考察した。結果として、(二元)三次形式におけるシルベスター等の研究に端を発する古典的不変式論の結果を今回の私の幾何学的定式化に適切に応用することで、単独型方程式については方程式の定義関数から上記の分類を判定する微分共変式(判別式等)を定式化できたように思う。これにより、線形のみならず非線形でかつある程度複雑な方程式系についてもその型を計算を通して判定することが可能となり、さらに例えば型変化(二階でいう放物型における退化性に相当する現象)などの複雑な構造についても、具体的なモデルを対象に分析可能になることが期待される。 また上記の研究と並行して共同研究者の澁谷一博氏と共に、接触変換(解を解にうつす方程式間の変換)の明示的構成に関する研究も行ってきた。これにおいては、現段階において二階の接触変換における、零階の点変換もしくは一階の接触変換からの明示的なリフト構成に成功しているといった進捗状況だが、これもルジャンドル変換などある程度具体的変換のクラスに限定することで、三階の接触変換へのもう一段階の明示的リフト構成を通した三階の方程式論の幾何学的研究への応用が期待できる。
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