研究課題
本年度は、平成27年度に基盤構築を行った、3次元プリンタを用い高精度放射線治療の線量検証に対応した患者模擬ファントムを作成するシステムに対し、造形精度の改善、ガラス線量計挿入のための前処理、ガラス線量計による線量測定、頭頸部ファントムとの線量比較を行い、現状の課題を明確なものとした。1. 造形精度改善には、CT画像データから造形のための3次元ボリュームデータを作成する際のパラメータ最適化を実施した。また、造形材料を変更し、冷却の際の歪み量が小さい材質を選択した。2. 3次元プリントした造形物は縮小傾向にあることから、線量計を挿入する穴の形状は、その縮小量を考慮する必要がある。線量計挿入のための最適な穴形状を決定するために、穴の直径を変化させたテスト用3次元ボリュームデータを数種類作成し、実際に造形したテストモデルと、ガラス線量計の外形が合致するパターンを決定した。3. 改善した造形用データから、ガラス線量計挿入のための領域を差し引き、そのデータを用いて新たに患者模擬ファントムの造形を実施した。造形された患者模擬ファントムにガラス線量計を挿入し、基本的な固定1門ビーム、および臨床的な強度変調回転照射プランを照射し、線量測定を実施した。4. 造形データの基に使用している頭頸部ファントムに対しても同様にガラス線量計を挿入し線量測定を実施し、両ファントムの線量を比較した結果、線量の誤差は、おおむね3%以内であった。人体の解剖構造が再現された頭頸部ファントムに対し、おおよそ同等の結果が3次元プリント患者模擬ファントムで得られた。放射線との相互作用において骨に近似しうる造形基材の開発が課題であると考えるが、本研究課題の目的を達成するための基盤システム構築としては、十分に満足のいく成果が示された。
3: やや遅れている
平成27年度に生じた課題を改善し、本年度の目的であった患者模擬ファントムを用いた投与線量検証システムの評価を行った。臓器別線量解析ソフトウェアの開発に着手しており、計画よりやや遅延している項目もあるが、おおむね順調に進展している。
臓器別線量解析ソフトウェアの開発を進め、これまでの研究成果を論文にまとめ本研究課題の総括を行う。
成果報告のための論文執筆が進行中であり、そのための経費を次年度へ持ち越すため。
論文執筆および掲載に必要となる経費として使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
Physica Medica: European Journal of Medical Physics
巻: 32 (10) ページ: 1314-1320
10.1016/j.ejmp.2016.07.091
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