研究課題/領域番号 |
15K21062
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上野 泰治 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(SPD) (20748967)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 注意 / 視覚性ワーキングメモリ / アイトラッキング / シミュレーション / PDP |
研究実績の概要 |
平成27年度は、次年度以降に計画されているアイトラッキング(視線計測)研究・及び計算機モデリング研究の土台となる心理実験を行った。具体的には、計算機モデルでシミュレーションするべきターゲットとして設定される心理現象を明らかにする実験であった。この心理実験は、「注意と記憶の相互作用」についての二つの対立理論の優劣を区別するものであった。 具体的には、以下の二つの理論である。注意を注がれた視覚情報はその記憶成績が上がることについては既にコンセンサスが得られているが、それがなぜかという理由については論争対象となっている。Cowan(1999)は、注意を注がれることで頑健な表象となるため、外界の(無関係な)視覚情報からの妨害効果が減って、その記憶成績が上がると説明する。一方、Allen et al. (2014)は、注意を注がれた視覚情報は、注がれていない視覚情報を記憶するシステムとは別の、もう一つの記憶システムによって冗長に(=2つの記憶システムで)表象されると説明する。もちろんその冗長なシステムにはリスクがあり、むしろ外界からの無関係な資格情報による妨害に弱いという仮定をおいている。これらの対立理論の区別には、注意を注いだ視覚情報が外界からの妨害情報に対して大きな影響を受けるか否か、という心理実験が有用である。結果、注意を注げば注ぐほど、外界からの妨害効果が強くなるという結果が4つの心理実験から得られ、後者の理論が指示された。 これらは、国内外の研究協力者によって既に2件の国際学会・2件の国内学会で発表され、また、次年度に3件の国際学会での発表が採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は4つの心理実験を実施することを申請計画に記載していた。これらの心理実験はいずれも滞りなく実施され、それらは、研究代表者自身、また国内外の研究協力者によって、既に2件の国際学会・2件の国内学会で発表され、また、次年度に3件の国際学会での発表が採択されている。また、次年度の計画として申請計画に記載されたアイトラッキング研究も、そのパイロットデータを取得し、次年度以降の研究をスムーズに進める準備を整えた。これらの点から、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請計画に記載の通りの計画をこれまで実施しており、次年度の計画も既にパイロットデータを取得済みであることを考慮すると、今後の推進方策には何の変更も必要が無いと考えられる。大きな課題となるような要素も見当たらない。研究協力者との連絡を密にし、迅速なデータ取得・論文執筆をおこなっていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者が優秀であり、短時間での心理実験が可能であったため、実験費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のアイトラッキング実験では、データ取得・分析ともに時間がかかるため、ここでの研究協力者人件費に使用する。
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