研究課題/領域番号 |
15K21063
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永縄 友規 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00613233)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不斉合成 / フェナントロリン / ロジウム / 亜鉛 / 銅 / 酸化 / 還元 |
研究実績の概要 |
古典的な窒素系二座配位子であり幅広い金属イオンとの錯形成が可能である1,10-フェナントロリンを主たる骨格として利用するキラル配位子の創製は不斉合成化学において未開拓であり、我々は配位性のフェノール性水酸基を同一分子内に組み込んだ三座キラルフェナントロリン配位子を新たに設計し各種の金属を持ちいる不斉分子変換反応への適用に取り組んでいる。本年度では以下に示す三種類の金属を用いる不斉変換反応に成功した。 1、ロジウム触媒を用いる分子内ヒドロシリル化反応:本配位子から調製したロジウム錯体が、オレフィンの分子内ヒドロシリル化反応を経由するヒドロシラン類の不斉脱対称化に対する効果的な触媒として働くことを見出した。本反応で得られる生成物は、近年注目をあつめつつあるキラルケイ素中心を含む有機ケイ素化合物であり、同化合物の新規構築法を提供することに成功した。 2、亜鉛触媒を用いるβケトエステル類の不斉アミノ化反応:本配位子から調製した亜鉛錯体が、βケトエステルとアゾジカルボン酸エステルとを用いる求電子的不斉アミノ化反応に効果的な触媒であることを見出した。 3、銅触媒を用いるオキシインドール類の不斉ヒドロキシル化反応:酢酸銅と本配位子から調製した銅錯体が、オキシインドール類の不斉ヒドロキシル化反応に有効であることを見出した。酸化剤としてはN-スルホニルオキサジリジン(Davisオキサジリジン)が効果的であり、良好なエナンチオ選択性で酸化体を与えた。本錯体のエックス線結晶構造解析の結果、銅は予想通りフェナントロリンと三座配位をとっていることを確認した。この単離した錯体を用いて反応を行ったところ、反応系内で調整した銅錯体と同様の活性を示したことから、本錯体が実際に触媒として機能しているものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルフェナントロリン三座配位子の金属触媒反応における多角的な適用への検討を標榜し、本年度はロジウム、亜鉛、銅という族も周期も異なる三種類の金属に着目し各種不斉分子変換反応に対する有効性を実証できた。またこの際、三座配位子であることの触媒活性の発現に対する重要性や配位子内の置換基修飾がエナンチオ選択性にもたらす効果など、設計上の指針に対しても一定の知見が得られ今後の検討へとフィードバックできるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず本配位子に適用可能な金属触媒の種類を拡充を前年度に引き続き検討していく。これと並行し、前年度に触媒活性の創出に成功したロジウム、亜鉛、銅錯体に関して、これらを用いる新規な不斉分子変換の検討を行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などの必要な物品費が当初の計画と比較し、少額にて購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、高額となる遷移金属触媒の購入費や、当初の予定されていなかった学会参加のため、本年度分の予算余剰分をこの費用に充当する予定である。
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