研究課題/領域番号 |
15K21064
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中谷 肇 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80456615)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 三量体型オートトランスポーターアドへシン / HRV3Cプロテアーゼ / 精製方法 |
研究実績の概要 |
強い付着性と凝集性を示すアシネトバクター属細菌Tol 5はAtaAと呼ばれるタンパク質性ナノファイバーを介して様々な非生物材料に付着する。AtaAファイバーの強い非特異的付着性を担うタンパク質の構造を明らかにするために、Tol 5細胞表面からAtaAファイバーを切り出す技術を用いて、様々なファイバー上のタンパク質ドメインを含むAtaAファイバー断片の精製を試みた。すでに結晶構造が明らかとなっているファイバー上のドメイン(FGGドメイン)にHRV3Cプロテアーゼにより切断される配列を付加した5つの3CAtaAコンストラクトを作成し、これを野生型のAtaAをノックアウトした細胞に発現させた。その結果、5つの3CAtaAはどれも発現し、細胞表層に提示されていた。これら3CAtaAを発現させた細胞の付着および凝集性を確認したところ5つのうち4つは野生型と同様の性質を示すも、N末端のヘッドドメインの根元にプロテアーゼサイトを導入した残りの1つの3CAtaAは顕著な付着凝集性の低下が見られた。これらの表層提示された3CAtaAにつて、HRV3C処理のよりファイバーの断片が得られるか検討したところ、ファイバーの根元付近にプロテアーゼサイトを導入したもの1つを除き、プロテアーゼ消化によるファイバー断片が得られた。付着性を持ち、かつプロテアーゼ切断が可能な3種類の3CAtaAについてファイバー断片の精製を試み、硫安沈殿と限外ろ過により精製に成功した。しかしながら得られたファイバー断片の量は、プロテアーゼ導入箇所により著しく差が生じた。プロテアーゼサイト導入箇所周辺の構造による切断効率の違いが影響したと考えられる。また、プロテアーゼサイトを導入することで著しい付着・凝集性の低下が見られたN末端のヘッドドメイン周辺の配列について、このドメインがAtaAの機能に重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子構造上比較的難しいAtaAファイバーの変異体作成を行い、その細胞内および細胞表層発現が完了した。一部のファイバー断片については精製が完了した。切断効率の低下や、プロテアーゼサイトの導入後に機能を失うといった事例が見られたが、今後の検討により解決可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに精製に成功しているAtaAファイバー断片に関しては、電子顕微鏡によるその形態的特徴の観察、QCMによる付着性の測定を行い、全長に近いAtaAファイバーのそれと比較する。 今回の研究でAtaA付着性に強い関与が示唆されたN末端のヘッドドメインについて、特に着目し、最近明らかになったN末端ヘッドドメイン周辺の結晶構造をもとに、このドメインを切り出すことができるコンストラクトを作製し発現と精製および付着性の測定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加予定の学会には参加せず、他の学会に参加した結果、必要な旅費が想定より少なくて済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在投稿中の論文につて、来年度計画に挙げている予定額よりも投稿費用が多くかかる見込みであるので、そちらに加算して使用する計画である。
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