研究課題
本研究の目的は、人工血管の治癒効果を高める『短鎖選択的接着ペプチド』を取得することである。具体的には、①特定の細胞外マトリックス(ECM)だけを接着させるペプチド、②内皮細胞だけを接着させるペプチドをコンビナトリアルに網羅的に探索し、最適配列を発見することである。研究最終年度の平成28年度では、特に上②の内皮細胞だけを接着させるペプチドの配列最適化を試みた。ペプチドの最適化には、ペプチドそのものの濃度検討なども考えられるが、ペプチドを修飾させる先の高分子材料の違いによっても効果が異なるため、ペプチドと高分子の組合わせの最適かも考慮して研究を展開した。探索によりえられた代表的な細胞選択的ペプチド4種類と、異なる物性値を有する6種類の合成高分子を組み合わせた、合計24種類の足場材料を作製した。高分子材料には、細胞培養環境(37°C)においてモノマー配合率を変えることで結晶状態や融点が変化するpoly(ε-caprolactone-co-D, L-lactide)(以下、P(CL-DLLA)と表記)を用いCLとDLLAの配合率や分子量の違いによる、異なる流動性を持つ6種類の高分子作成に成功した。作製した24種類の足場材料に対し、3種類の細胞(FB、EC、SMC)の1日後の接着実験を行った。その結果、情報解析手法である主成分分析(高次元情報を2次元に圧縮表示する統計学的手法)を用い、ペプチド物性値、高分子材料物性値と細胞接着の関係性をマップ化することができた。さらに、ペプチド物性値と高分子物性値により表される物性値マップ図上にて、細胞接着の傾向を評価することができ、物性値にて細胞接着の制御ができる可能性が示唆された。また、細胞種によって同じ物性表面に対する応答がかなり異なっており、この差を最大にする物性値の組み合わせを見つければ、細胞選択性を生み出す可能性が見えた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 図書 (2件) 産業財産権 (1件)
Materials
巻: 9 ページ: 730
10.3390/ma9090730
Bioengineering
巻: 3 ページ: 31
10.3390/bioengineering3040031
International Journal of Polymer Science
巻: 2016 ページ: 2090985
10.1155/2016/2090985
Analytical Sciences
巻: 32 ページ: 1195-1202
10.2116/analsci.32.1195