研究課題/領域番号 |
15K21075
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
須田 庄 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (30710206)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アソシエーションスキーム / アダマール行列 / 直交デザイン / 不偏相互基底 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はアダマール行列に付随する組合せ構造を代数的組合せ論の手法を用いて研究することであった。 近年、複数個のアダマール行列を用いて定義されるmutually unbiased basesの研究が盛んになっている。本研究では、unbiased orthogonal designs(不偏直交デザイン)の概念を導入し、mutually unbiased bases, unbiased weighing matricesの構成を統一的に与えた。直交デザインはアダマール行列の自然な一般化であり、unbiased orthogonal designsはmutually unbiased basesの自然な一般化である。この概念の導入により、Seberryによる直交デザインによるアダマール行列の構成を用いて、不偏直交デザインから多様なunbiased weighing matricesの構成が導かれた。
位数が2の冪上のブッシュ型アダマール行列の既存の構成を一般化することで、有限体上の一般化アダマール行列であって、特別なブロック構造を有する例を構成した。ブッシュ型アダマール行列にはアソシエーションスキームが付随することが知られており、構成された一般化アダマール行列にもアソシエーションスキームが付随することが示された。
無向グラフに対するcocliqueのサイズの上界を線形代数的手法で導かれるHofmannの不等式を、正規な有向グラフに拡張した。更に、Hofmann coloringに対応する概念を正規な有向グラフに対して定めることにより、非対角ブロックが歪対称なブッシュ型のアダマール行列をグラフ理論的に特徴づけることに成功した。これはWallisによる、対称なブッシュ型アダマール行列の強正則グラフによる特徴づけの類似とみなせる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
unbiased weighing matricesの新たな概念の導入による系統的な研究およびブッシュ型一般化アダマール行列の構成により、研究は順調に進んでいると判断できる。 また、種々のアダマール行列および関連する概念に対して、有向グラフ、アソシエーションスキームの観点からも研究を進められた点も評価できる。 当初研究計画で予定しなかったが、mutually unbiased basesに付随する不偏アダマール行列にブッシュ型の構造を課すことにより、あるアソシエーションスキームの構造を有すること、およびアソシエーションスキームの構造による特徴づけも行った。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは実数体上の行列を考察してたので、今後、複素数体上の行列の考察する。構成に関して、複素不偏直交デザインの構成を行う。特に、6乗根を成分にもつバトソン型の不偏複素アダマール行列、複素直交デザイン、符号理論との関連を考察する。 また複素不偏相互基底の研究に取り組む。複素球面上の符号理論の研究、特に半正定値計画法の適用を試み、複素球面上の有限点集合のサイズの上界を改善を試みる。特に複素不偏相互基底といった、biangular line setsに対して適用する。 さらに、研究計画に掲げていた4060頂点の強正則グラフの最大クリーク分解を計算機を援用して試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Lethbridge大学の研究訪問の旅費を一部先方に負担してもらったため。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者のKharaghani氏の研究訪問に使用する。
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