研究課題
前年度までの研究において,ヒトが外部事象を観測するさいに,脳内に内部モデルを構築すること,その構築の処理が脳波の事象関連電位の変化として観測されることを示した.これまでの解析では,事象の発生頻度をもとに内部モデルが構築されるという仮定のもと解析を行なったが,最終年度はこの過程を強化学習モデルによって説明することを試みた.実験では,参加者に要因推定と戦略学習の2つを同時に解くことが必要な課題を課した.そのときの行動選択が,要因に対する信用度を記述する信念と,報酬の期待値を記述する状態遷移関数が互いに協調して更新されるモデルによって,より良く説明できることを明らかにした.さらに,内部モデル更新のための予測誤差信号と事象関連電位との関連を,trial-by-trialな一般化線形モデルによって解析し,内部モデル更新に関する脳内処理を調査した.結果として,信念に関する誤差信号はフィードバック関連陰性電位(feedback-related negativity)に反映され,状態遷移関数に関する誤差信号はフィードバック関連陰性電位とP300に反映されることを分かった.行動と脳波の解析の結果は,2つの脳内処理が協調して内部モデルを構築することを示している.また,事象発生から300ms以内に発生するフィードバック陰性電位における信念予測誤差の効果は,内部モデルの更新が少なくとも300msで完了することを示唆している.これにより,時間解像度に優れた脳波を用いた計算論的解析によって,内部モデル更新の時間ダイナミクスの一部が明らかになった.
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システム/制御/情報
巻: 62 ページ: 159,165