カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)は、小児期の突然死の原因となる疾患の一つである。同疾患と診断された5歳男児の遺伝子スクリーニングにより検出した新規TRPM4遺伝子変異について検討した。 HEK細胞にTRPM4チャネルを発現させ、ホールセル・パッチクランプ法を用いて、コントロールと変異のTRPM4電流を比較したところ、変異では電流量の減少を認めた。そのため、この電流変化の機序、表現型に与える影響について検討することとした。 まず、電流減少の機序について検討した。その原因として、細胞膜でのTRPM4チャネル発現量が減少している可能性が考えられたため、HEK細胞にTRPM4を発現させ、ビオチン標識し、ウェスタンブロットを施行したところ、チャネル発現量はコントロールと変異において有意差を認めなかった。また、TRPM4チャネルは、カルシウム感受性が知られており、遺伝子異常によりカルシウム感受性が変化している可能性が考えられたため、インサイド-アウト法によるパッチクランプを施行したところ、コントロールと変異において有意差を認めなかった。これらの結果より、この変異による電流の原因として、細胞膜のチャネル量の変化、カルシウム感受性の変化は否定的であることが判明した。 次に、TRPM4遺伝子変異と表現型との関連について研究することとした。患者の表現型はCPVTであるため、HEK細胞にTRPM4チャネルを発現させ、ホールセル・パッチクランプ法を用いてイソプロテレノールによるTRPM4電流の変化について比較、検討する方針としており、この実験は現在進行中である。これらの結果が整い次第、論文投稿する予定である。
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