研究課題/領域番号 |
15K21083
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
我妻 慶祐 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10725071)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | T細胞分化 / エピジェネティクス / 遺伝子再構成 |
研究実績の概要 |
本研究では、染色体高次構造を制御する因子として報告されているコヒーシンに注目し、特にTCR遺伝子再構成におけるコヒーシンの役割を明らかにすることを試みた。コヒーシンサブユニットのSmc3 floxマウスとCpa3-cre及びLck-Creマウスとを交配して得られたSmc3 cKOマウスを解析したところ、より未熟なDN胸腺細胞の割合が増加し、分化が進行したDP胸腺細胞の割合が減少し、胸腺細胞全体の細胞数も著しく減少していた。そこで、cKOマウスではDN細胞からDP細胞への分化に必須で、染色体高次構造の変化が重要と考えられるTCRb遺伝子の再構成が障害されている可能性を考えた。しかし、cKOマウスからDN3細胞をセルソーターで単離し、TCRb遺伝子再構成を調べたところ、コントロールマウスとの顕著な差が認められず、cKOマウスでも正常に再構成が起きていたことから、TCRb遺伝子再構成の制御にはコヒーシンが必須ではないことが明らかになった。TCRaの遺伝子再構成にはコヒーシンが重要な役割をしていることが既に報告されている(doi: 10.1038/nature10312)ので、遺伝子座により異なる染色体高次構造変化の制御機構を介してTCR遺伝子再構成が制御されることが示唆された。 そこで、TCRb遺伝子の染色体高次構造変化を司る因子として、既にTCRb遺伝子の再構成を制御することが明らかになっている転写因子を新たな候補として研究を展開することにした。Rag2KOマウスのDN胸腺細胞をTSt4/DLL4ストローマ細胞で培養し、レトロウイルスベクターを用いて候補転写因子のノックダウンを行い、染色体上のVbとDJb間の距離を計測する実験を開始している。さらに候補転写因子のノックアウトマウスでの解析も開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想には反したが、TCRb遺伝子の再構成では、TCRaとは異なり、その制御にコヒーシンが必須ではないことが明らかになった。さらに、TCRb遺伝子再構成に必要な染色体高次構造変化に関わる真の因子を特定するべく、特定の転写因子に注目し、すでに新たな研究の展開を進めているため、このように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
特定の転写因子について、TCRb遺伝子の染色体高次構造の変化に関与することが示されたので、そのメカニズムについてさらに詳細に解析を進める。具体的には、核内での転写因子とTCRb遺伝子の染色体領域の局在とダイナミクスに注目し、それらを同時に単一細胞レベルで解析可能なImmuno-FISH法を中心に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
T細胞分化の初期におけるコヒーシンの役割を明らかにするため、Cpa3-CreマウスとSmc3floxedマウスを交配し解析してみたところ、CreによるSmc3の欠失が不完全であった。そこで、さらにROSA26-YFPマウスと交配する必要があったが、繁殖に時間を要し、本年度内に計画していた実験ができなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
時期は遅れたが、計画していた研究を遂行するために、必要な物品を予定通り購入する。
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