研究課題/領域番号 |
15K21086
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堤田 成政 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (20650352)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自然資源管理 / オープンジオデータ / 精度評価 |
研究実績の概要 |
本研究ではオープンジオデータ(ユーザーが入手可能でありかつ利用・加工できる地理情報データ)の自然資源管理への有効活用に向け、オープンジオデータの利活用の実態を調査するとともに、データの量・質を調べることで、ユーザーにとって利用価値の高いオープンジオデータはどのようにあるべきかを調査・分析する。2015年度に実施したのは以下の3点である。 「i. 自然資源管理におけるオープンジオデータ利活用に関する事例調査」多くは近年オープン化がすすんだ衛星画像を利活用し、自然資源を評価する使い方がみられるが、それらは研究レベルに留まり、実際の管理者が利用するにはいまだハードルが高い。また、オープンストリートマップなどのボランティアベースで構築されるボトムアップ型オープンジオデータは、一般的にデータの多くが都市構造物に集中しており、現段階では自然資源管理には量的に不十分であることが確認された。 「ii. 自然資源管理のためのオープンジオデータの利活用に関する事例調査」長崎県対馬市において絶滅の危機に瀕しているツシマヤマネコの管理を対象とし、オープンデータ利用の実情や管理データのオープン化を想定した聞き取り調査を実施した。オープンジオデータのニーズが多くあるものの、現状では適したデータが乏しいことが明らかになった。 「iii. オープンジオデータの量的・質的調査」オープンジオデータの中でももっとも活用が進む衛星画像に着目し、実際の活用方法を検討した。MODISデータから一年ごとの土地被覆比率推定し、汎用性の高い自然資源管理に必要なデータ作成手法を開発した。今後はオープンジオデータの質的評価を実施するため、土地被覆図の局所精度評価が可能な手法の開発を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
i. 自然資源に関するオープンデータ関連のレビューを継続的に実施している。
ii.対馬市の事例では、今後希少種に関するデータがオープン化の必要に迫られた際の検討を進める研究に発展している。一方で、オープンジオデータをもちいた自然資源管理を実施する好事例の把握をすすめていく必要がある。
iii. 衛星画像では、撮影された元データだけでなく、画像分析によって推定された土地被覆、植生バイオマス量などといった付加価値化した地理環境情報のオープン化が進んでいる。その一環としてMODISの植生指数プロダクトより一年ごとの土地被覆比率図を作成し、その結果を学術論文として発表した。作成されたジオデータの公開準備をすすめており、2016年度中にオープンデータ化する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国内外においてオープンジオデータをもちいた自然資源管理を実施する好事例を探索する。自然資源管理に関連するオープンデータは官学が主導となり推進しており、オープンガバメント、オープンサイエンスの理念とも密接に関わるため、これらの動向にも注目する。また、オープンジオデータの空間精度評価手法の開発に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長崎県対馬市において対象としたツシマヤマネコを事例としたオープンジオデータの利活用の実態調査は比較的順調に聞き取りデータを収集することができた反面、オープンジオデータの使用は適したデータ量が想定外に不足しており、商用データとの比較実験をするには不適と判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
予算を効果よく執行するため、引き続きオープンジオデータを最大限に利活用した自然資源管理を実施する事例の探索を実施し、その地域を対象とした商用データ購入をすすめる。また、それらに関連する備品等への執行も実施する。
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