研究課題/領域番号 |
15K21088
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研究機関 | 開智国際大学 |
研究代表者 |
菅原 祥 開智国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80739409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポーランド / ティヒ / 記憶 / ポスト社会主義 / 文化遺産 / 団地 / 都市 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に行ったポーランドの社会主義時代に建設された計画都市、ティヒ市での調査の結果の一部をとりまとめ、成果として発表した。口頭発表としては、日本社会学会第89回大会のテーマセッション「文化遺産の社会学を再考する」において、報告「文化遺産は社会主義の夢を見るか?――ポーランドのティヒ市における社会主義体制の遺物をめぐって」を発表した。またそれと並行して、論文「『社会主義の計画都市』の現在と過去の記憶:ポーランド、ティヒ市の調査から」を執筆し、『開智国際大学紀要』に投稿した。これらの業績においては、ポーランドのポスト社会主義の都市環境においてかつての社会主義時代の「遺物」が「文化遺産」として取り扱われるようになりつつあるプロセスを、地元住民の微視的な実践の観点から明らかにしたものである。 これらの業績においては、これまで申請者の研究の中には欠けていた「文化遺産」という視点が導入されることによって、研究課題にさらなる視野の広がりが生まれ、大きな進歩を見ることができた。また、これらの業績の公表を通じて、国内外をフィールドとして文化遺産研究を行う多くの社会学者と有意義な交流を行うことができ、将来的な共同研究などの計画も持ち上がりつつあるなど、今後の研究の深まりも期待できる。 調査・研究の遂行実績としては、関連文献の収集・精読及び、2月にポーランドで約2週間の現地調査を行ったことが挙げられる。このポーランド現地調査においては、昨年度に引き続きティヒ市に関する調査を進めたほか、社会主義時代のポーランドの都市空間と体制転換後のその変容をより広い文脈から捉えるために、カトヴィツェ市をはじめとしたティヒ市周辺のシロンスク地方の都市にも滞在し、情報収集に務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポーランドをフィールドとした国外の調査については重要な成果発表を行うことができ、またテーマが新たな広がりを見せるとともに他の研究者との交流も進むなど、期待以上の大きな進展が見られている。ただ、そちらに大きく注力した分、当初計画していた国内に関する調査研究については、期待したような進展が見られなかった。以上の経緯から、本研究課題の遂行状況は「やや遅れている」と見なさざるを得ず、来年度における軌道修正が必要であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、成果発表および他の研究者との交流の中から、当初本研究課題には存在しなかった「文化遺産研究」という新たな方向性が生まれた年であった。これを受けた来年度の研究においても、当初の研究計画を軌道修正し、この新たな視点を活かした形で研究を進めつつも、それを最終的には本研究課題の当初の目標である「近代化の記憶とローカルな『場所』の関わり合いの解明」につなげていく予定である。 具体的には、まず前年度までに行ったポーランドにおける調査の成果をまとめ、論文を1本執筆する予定である。また、補充的な海外調査を8月から9月もしくは2月から3月に予定している。 またこれまでのところあまり大きな成果を上げられていない国内を対象とした調査研究についても、前年度に得られた新たな視点である「文化遺産」をキーワードとしながら再構築をはかり、進展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に微妙な変更が生じ、特に国内における調査研究が遅れていること、また、当該年度を最後に開智国際大学を退任し、次年度から京都産業大学に着任することに伴い、事務手続きや引っ越し等の都合上、2月から3月に当初計画していたほど長期の海外調査を行えなかったことなどから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、国外調査旅費、国内調査旅費、物品購入に使用する予定である。特に次年度においては前年度に当初計画していたほど長く海外調査ができなかったことから、比較的長期の海外調査を予定しており、その調査旅費に充当する予定である。
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