研究実績の概要 |
最終年度に当たる2018年度は、まず日本の都市近代化の記憶を私がこれまで研究してきたポーランドの都市近代化の記憶と比較するため、文化現象の側面からのアプローチを試みた。具体的には、「団地」を描いた日本文学を詳細に分析し、そこに見られる「ノスタルジア」の論理を明らかにし、それと東欧のポスト社会主義におけるノスタルジアとの相同性を指摘した。研究成果は論文「団地ノスタルジアのゆくえ」(『京都産業大学論集 社会科学系列』第36号、2019年)として公開した。 ポーランドでの研究においては、単著『ユートピアの記憶と今』(京都大学学術出版会、2018)を出版した。この本は、2012年に学位審査を受けた博士論文を基としたものであり、本研究課題の直接の成果ではないが、記述の一部に本研究課題で得られた成果が盛り込まれている。また、本研究課題の成果である、社会主義時代に建設された都市環境における社会主義の記憶と「文化遺産化」現象については、総括的な論文「Pamiec o socjalizmie, zabytki socjalizmu. Proces ochrony zabytkow PRL w Tychach」をポーランド語で執筆した(『Studia Krytyczne』掲載予定、掲載時期未定)。 また、2019年2月~3月にかけて、ポーランドで補充的な現地調査を行い、主に社会主義時代のアートの文化遺産化についてインタビューおよび文献収集を行った。得られた資料等は現在整理中である。また、この現地調査の最中、ワルシャワのポーランド科学アカデミーでのセミナーで本研究課題についての研究発表をポーランド語で行うなど、本研究課題の研究成果をポーランドの現地研究者と共有することに努めた。
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