研究課題/領域番号 |
15K21089
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
増田 史子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60362547)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 船舶先取特権 / 海事債権 / 物権準拠法 / 船舶金融 / 海事倒産 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度から引き続き、資料の収集とその検討を中心に研究を進めた。交付金は、主に消耗品費(書籍、資料整理用の機器)、国内旅費として使用した。公表した成果物は外国における議論を紹介したものに限られるが、中心的な検討対象である船舶先取特権と海事債権の実現については、平成29年2月に研究会で報告を行う機会も得て、比較的順調に検討を進めることができている。 具体的には、平成27年5月に開催された万国海法会ニューヨーク大会に参加し、海事倒産に関する議論、EU法などの外国法の動向について、論文にまとめて公表した(同大会に参加するための旅費・登録費については公益財団法人日本海法会から支援を受けたが、同大会では本研究に関連するテーマが複数取り扱われる予定であったことから、参加及び報告書の執筆に際して資料収集を行い、そのために本研究費を使用した。このため、上記論文を本研究の成果として扱っている。なお、旅費について上記の支援を受けたため、本年度は本研究費からの外国旅費の支出は不要となった)。船舶先取特権と海事債権の実現については、国際取引法の研究会において、これまでの検討から得られた諸外国法に関する知見を前提に、日本の法政策という観点からは、国際私法において船舶先取特権はどのように処遇されるべきなのかを海商法改正に関する議論を踏まえて検討し、報告した。従前の議論に対して批判的な考察ではあったが、国際取引の実務の観点からはそれなりの説得力が認められる立論であることは確認できたため、このテーマについては、報告の際に受けた指摘などを踏まえて、平成29年度中に成果として取りまとめたいと考えている。 なお、平成27年度に先送りとすることにした部分(運送人留置権に関する検討)については、平成28年度も、資料収集は継続しているものの、大きく進展させることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ここ数年で本研究テーマに関連する外国文献が相次いで刊行され、手元の資料は充実してきたものの、平成28年度中は、当初は予定していなかった新しい研究課題等への対応に手間取り、本研究課題に関する検討が疎かになってしまっていた面がある。この情況から、資料の収集に関してはともかく、検討については遅れ気味であるといわざるをえないため、全体としては「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の遅れは、主として、当初は予定していなかった研究・報告の機会を頂いたことにより、うまく時間配分できなくなってしまったことによるところが大きい。検討に必要な資料はかなりそろってきているので、平成29年度は、より計画的に資料を読み込む時間、執筆にあてる時間を確保するように努め、本研究課題を推進していきたいと考えている。 なお、平成27年に先送りにした部分(運送人留置権に関する検討)は、現在でもいずれ取り扱う必要があると考えているが、平成29年度も他の研究課題への対応が必要であることを踏まえ、さしあたりは、本研究開始以来、比較的順調に検討を進めることができている部分(船舶先取特権に関する検討)に優先的に取り組むこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入する予定であった書籍の刊行時期の変更に伴い、数万円の残額が発生する見込みとなったため、書籍の購入は次年度に行うこととし、残額を国内旅費にあてることにした。変更した用途に研究費をあてた結果、711円の未使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額であるため、次年度の交付金とあわせて、書籍の購入にあてる予定である。
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