研究課題/領域番号 |
15K21096
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中山 琢夫 京都大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (70623883)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境経済 / 地域経済 / 再生可能エネルギー / 分散型 / バリュー・チェーン / 地域付加価値創造分析 / 地域経済波及効果 |
研究実績の概要 |
本研究の1年目は、分散型再生可能エネルギーによってもたらされる地域経済効果の定量評価手法のサーベイ、および、産業連関表を用いた再生可能エネルギー事業による地域経済波及効果分析とその課題の克服に取り組んだ。とりわけ、ドイツのエコロジー経済研究所(IOEW)が開発した、バリュー・チェーンアプローチを基盤とする、地域付加価値創造分析を日本に導入とその社会実装を目指し、日本版地域付加価値創造分析モデルの構築とその検証を行った。 具体的には、第一に、日本における電源間の比較分析を実施し、それらの特性を明らかにした。第二に、長野県における太陽光発電事業の事例研究を中心としてこの、地域付加価値創造分析モデルの特性を検証するとともに、長野県飯田市における先駆的な事例を本モデルによって分析することで、2005年から2030年にかけての地域経済付加価値創造の累計ポテンシャルをシミュレーションした。この試算から、地元のオーナーシップ、つまり、地元出資比率の向上が、地域の付加価値創造にとって重要であることが示唆される。 一方、従来のこの地域経済付加価値創造分析モデルは、分散型の再生可能エネルギー事業の直接効果のみを緻密に試算する手法だと言われていた。したがって、間接一次・間接二次効果といった波及効果を得るためには、産業連関分析との統合が不可欠となってくる。この課題について、環境経済・政策学会2015年大会において、討論者の先生から非常に有益なご示唆をいただいた。また、2016年3月に実施したドイツ調査において、IOEWでも、バリューチェーン・アプローチと産業連関分析の統合が試みられており、その成果がドイツ語の報告書で発表されていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記【研究実績の概要】に記載のとおり、本研究の1年目の目標はおおむね達成している。また、下記【今後の研究の推進方策等】に記載のとおり、本研究の次年度計画目標の準備も着々とすすんでいる。 本研究全体として、当初の研究計画調書に記載のロードマップのどおり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究では、ドイツの「バリュー・チェーン」アプローチによる、(1)定量評価モデルの経済学的理論分析とその特性評価、および、その(2)定量化分析結果の適用手法分析である。 第一の目標である、ドイツ型「バリュー・チェーン」アプローチによる定量評価モデルの経済学的理論分析とその特性評価については、これまでの研究によって、地域付加価値創造分析の特性が徐々に分かってきた。従来のこの分析手法は、直接効果のみを計測したものであることを主たる理由として、その計測値が、産業連関分析と比較して控えめに見積もられることが分かっている。このことは、ドイツのIOEWも課題と認識しており、産業連関分析との統合モデルの構築が進められている。本年度は、これらの先行研究や昨年度の学会で得られた示唆をもとに、日本における地域付加価値創造分析の産業連関分析との統合に取り組む。 一方、第二の目標であるドイツにおける「バリュー・チェーン」アプローチによる、定量評価手法の特性、および適用手法分析については、ベルリンのAEE(再生可能エネルギーエージェンシー)との共同作業によって、ドイツの自治体向けアンケート調査を行うことになっている。この調査では、とくに、こうした地域経済評価が、自治体による、再生可能エネルギーを中心とした分散型エネルギーシステムの推進政策に、どのように活用されているのかを明らかにすることに重点をおいている。この調査によって、日本へのその移転可能性を検討し、社会的に有用な手法としての課題を抽出することを目指している。
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