本研究の目的は、異なる生活基盤のなかで生計を維持する障害者に焦点を当て、彼ら障害者に関わる資源を地図化することで、それがどのように地域的な広がりをもっているのか、もしくは変容しているのかを可視化し、その地域特性を描くことにある。 本年度(平成29年度)は、前年度に引き続き、コンゴ共和国ブラザヴィル市における現地調査で得られたデータや資料を検討し、国家の統制や規制の強化が進む両国のコンゴ川の国境ビジネスから、障害者と国家の関係について分析を加えた。また平成30年2月24日から3月2日までブラザヴィル市に滞在し、障害をもつ市民に対してライフヒストリーを聞き取り、障害者のライフコースをとおしたコンゴ川流域における地域史を再編するための分析を加えた。加えて、平成29年8月14日から9月1日および9月7日から12日まで、カメルーン共和国に滞在し、アフリカにおける障害者の生活実践に関する現地調査を実施し、障害者の資源マッピングに必要なデータを収集した。また、日本アフリカ学会第54回学術大会への参加や、東京外国語で実施した国際シンポジウム「芸術と障害:アフリカとアジアの事例をめぐって」においてコメンテーターとして参加し、参加者であるアフリカやアジア研究者、生態人類学者と活発な意見交換をおこなうことで、当該研究課題を進める上での有用な助言を得ることができた。また口頭発表や論文などをとおして、研究成果を発信した。
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