研究課題
肥満は糖尿病等の生活習慣病や自己免疫疾患に罹患するリスクを増加させる報告がある。食事誘導性肥満(Diet-Induced Obesity, DIO)では、その原因として、過食の問題のみならず、食の欧米化に伴う高糖質かつ高脂質な食生活変化の影響が懸念されている。本研究では食事含有脂質成分がもたらす肥満効果の解明を目的とした。実験として、市販の高脂質飼料に含まれる植物油の混合比率を変えて、オメガ6系脂質の成分を偏らせた特殊飼料を作製し、マウスに給餌してその効果を検討した。特殊飼料を給餌したマウスは肥満の表現型を示し、さらに餌を長期負荷したマウスの内臓脂肪では、線維化やマクロファージの浸潤による組織変化と、TNF-alphaなどの炎症性サイトカインの増加を認めた。高脂質飼料を給餌したDIOモデルマウスを使用して、摂食・代謝の調節部位である視床下部を対象とし、代謝物や遺伝子発現の変動を網羅的に調べることによる肥満因子の探索を試みた。市販の高脂質食を給餌したマウスでは、通常食を給餌したマウスと比較して、DNAメチル化基質前駆体として知られるメチオニン・スレオニン量の減少と、複数遺伝子の発現変動が観察された。これらより、高脂質食によるメチル化基質代謝への負荷経路の存在と、高脂質食に対応した遺伝子発現調節機構の存在が示唆された。今後は詳細なDNAメチル化パターンの解析を進展させることで、脂質成分の作用について栄養遺伝学的な検討を行いたい。
3: やや遅れている
昨年度に研究環境を変えたことによる実験環境の調整のため、当初の予定よりもやや遅れている。
研究の推進方策に大きな変更はなく、引き続き京都大学メディカルイノベーションセンターの施設を利用して行われる。
研究機関の移動に伴う手続き等準備のため
昨年度に使用していない費用に関しては、その使用方法に関して研究の物品費に充てる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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