研究課題/領域番号 |
15K21102
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椋本 宜学 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学物理士 (50736618)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 呼吸性移動対策 / 動体追尾 / 呼吸波 / 高精度化 / 予測モデル / 四次元画像誘導放射線治療 / 医学物理 |
研究実績の概要 |
難治性である肺癌、膵臓癌をはじめとする胸腹部腫瘍に対する放射線治療では、腫瘍の呼吸性移動範囲を包含する照射法が一般的だが、呼吸性移動の大きい腫瘍に対しては正常組織の被曝線量増大による有害事象の発生が問題視されている。四次元画像誘導放射線治療の1つである動体追尾照射法は、リアルタイム画像処理技術・高精度照射位置補正システムを融合させることで、腫瘍に限局した照射を可能とする次世代の照射技術である。本研究は、呼吸性移動を有する胸腹部腫瘍に対する四次元画像誘導放射線治療において、必須技術である腫瘍の未来位置予測に関して新たな予測モデルを開発し、四次元放射線治療のさらなる高精度化の実現を目的とする。 初年度の平成25年度では、当初の計画通り動体追尾照射を実施した肺癌、肝臓癌、膵臓癌患者において、既存の腫瘍未来位置予測モデル作成時に取得した腹壁および腫瘍の呼吸波のログファイルを解析し、新たな腫瘍未来位置予測モデル開発のための基礎データを取得した。本解析に関しては、呼吸波の特徴量を自動解析するシステムを構築することで解析効率を高めることを可能とした。本成果は次年度に計画している新たな予測モデル開発に利用していく。また、腫瘍未来位置予測モデルの作成には腫瘍の呼吸性移動を把握する必要があるが、体内の動きを観測するためには2対のkV-X線撮像システムによる同時曝射を利用した透視撮像が必要になる。詳細な腫瘍位置が観測できれば予測モデルの精度は高まるが、被曝線量の問題があるため情報量を最適化する必要がある。そこで本年度はさらに体内腫瘍位置のサンプリング率と腫瘍の未来位置予測精度の関係性について検証を行った。その結果、従来と同じ予測モデルであっても被曝線量を1/4~1/8に低減可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた腹壁および腫瘍の呼吸波のログファイルを用いた呼吸特徴量解析は、自動解析システムを構築することで、解析効率を高めることができた。本年度はさらに体内腫瘍位置のサンプリング率と腫瘍の未来位置予測精度の関係性についても検証を行い、従来と同じ予測モデルであっても被曝線量を1/4~1/8に低減可能であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
解析対象となる患者呼吸波の集積と解析に関しては、今後も継続して実施する。次年度は当初の計画通り、初年度で得られた基礎データに基づき、新たな腫瘍未来位置予測モデルを開発する。また、初年度に明らかにした予測モデル作成時の被曝線量低減に関しては、新たな予測モデルでも組み込んで行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では国際学会に参加して関連分野の最新情報を収集する予定であったが、本年度参加した国際学会では研究報告を行ったため、分担研究者として登録されている所属研究室の研究費より参加経費を計上した。そのため追加経費が不要となった。国際学会にて報告した研究成果は、本研究助成にて得られた情報も一部活用しており、その成果は今後の開発に利用することが可能であるため、次年度の研究開発がさらに推進されると期待される。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度使用しなかった研究費を利用して、2016/4/5-8に欧州放射線腫瘍学会が開催した高精度放射線治療のための品質管理法に関する講習会に参加し、情報収集を行った。欧州放射線腫瘍学会は古くから少人数のSchool形式の講習会を開催しており、関連分野にて高い評価を受けている。得られた知見はモデル開発後の品質管理(精度の担保)に活用していく予定である。
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